月刊おきにのうつわ|第十回伝活 〈和ろうそく〉
ろうそくはかつて提灯や行灯、灯篭などに灯されて生活に欠かせないものでした。しかし、明治以降の電力化によりその役目は終え、次第に照明としての役目は少なくなっていきました。
現在の暮らしで見かけるろうそくと聞くと、まっ先に誕生日が思い浮かぶのではないでしょうか?
ケーキに刺して灯された細いろうそく。ハッピーバースデーの曲が歌い終わるまで、ケーキにロウが垂れないかヒヤヒヤしながら、やや早回しに歌い終わって吹き消した思い出があります(笑)
その他に、お仏壇に灯したり、お寺に出かけたときに見る本堂の大きなろうそく、あとは花火の時、停電の時…?
奈良時代、仏教伝来と共に伝わったというろうそく。伝統的なろうそくはウルシ科のハゼの実から抽出された油脂(=ロウ)を溶かし、和紙を細く巻いたものの上に、畳の材料でもある藺草の芯の部分を巻いた物にロウ付けて固めて作られます。
ハゼの実から取り出したロウを木蝋、蜜蜂の巣から作られたものは蜜蝋、石油由来のロウはパラフィン蝋など様々なロウがあります。
仏前結婚式やおめでたいことを報告する法要などに使われる赤い朱ろうそくは、木型でつくられたろうそくに上から赤いロウを塗られます。
下記はろうそく工房にお邪魔したとに、赤いろうそくを作られている様子を撮影させていただきました。
白のろうそくの場合はよく練って白くしたロウを上から塗ります。(清浄生掛け)
(朱掛け作業を見学させていただきました/中村ローソク)
こちらで和ろうそくの製造工程が詳しく紹介されています。中村ローソクさんHP https://www.kyorousoku.jp/flow/
現在、流通しているろうそくのほとんどは石油系のロウを使った洋ろうそく。大量生産なので安価で使いやすく、近年はそちらが主流となったことから、和ろうそく屋さんも京都でも数件、全国で十件ほどまで減ってきています。
しかし、洋ろうそくの煙には石油由来のススが含まれ、お仏壇や仏像などを汚してしまう欠点も。その点、和ろうそくは植物由来の原料のため、煙も少なく、たとえ汚れても洗えば取れるという特徴があります。
(菖蒲の絵ろうそく/中村ローソク)
和ろうそくに花の絵が描かれた、絵ろうそくがあります。
かつて東北や北陸地方の雪深い地域で、花の少ない冬の時期に供花の代わりに絵ろうそくが供えられていました。
絵師さんが一つ一つ丁寧に描かれた季節のお花などの絵ろうそくを、現在はインテリアとして飾られたり、贈りものにする方も増えてきました。
私も、今までに手がけてきたテーブルコーディネートにはこの絵ろうそくをよく使わせていただいています。
(お月見のコーディネート・中村ローソク/ブライトンホテル京都)
季節ごと、行事ごとに絵ろうそくを飾って楽しんだり、何かの特別な機会に灯したりするのもいいかもしれません。ろうそくの炎の揺らぎにはリラックス効果があると言われています。
今まで手がけてきたコーディネート提案で、京焼・清水焼の次に多く使い提案してきた和ろうそく。
実例をご覧ください。
(クリスマスコーディネート・中村ローソク/コミュニティ・ラボN5.5)
秋の深まった時期でしたので、クリスマスをテーマにしたろうそくコーディネート。赤いろうそくをお花に見立てたたり、フルート型のグラスにろうそくを入れて飾りました。
(番組のディスプレイ・中村ローソク/KBS京都)
京都の工芸品を使って、端午の節句をテーマにディスプレイしたテレビ番組のスタジオ。菖蒲の描かれた絵ろうそくを使っています。
(絵ろうそく展示/よしもとラフ&ピースアートギャラリー)
新たな展示の提案として考え、壁に金具を付けた絵ろうそく展示。色々な絵ろうそくを見比べてていただきました。
蓮池をテーマにした展示・中村ローソク/ホテルカンラ京都)
ホテルの一室を借りての展示会。お風呂が非常に印象的な形でしたので、蓮の池に見たてて、蓮の絵の絵ろうそくを使い、蓮の葉や花を添えてインスタレーション展示をしました。とても好評をいただきとても思い出深い展示です。
テーブルコーディネートの際によく使用するキャンドル。キャンドルを和ろうそくに代えて新たな使い方を提案していきたいと思います。