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那覇交通の新川営業所はいつ存在したか
現在の那覇バスは、南風原町新川に新川営業所を設置している。この営業所は2006年に設立された比較的新しい営業所であるが、那覇バスの前身である那覇交通の時代にも、新川営業所が設置されていた。
謎多き那覇交通の新川営業所
ウィキペディアの「那覇交通」の記事にも「(旧)新川営業所(沖縄県島尻郡南風原町)」との記述があり、営業所として存在していたはずなのに、ネットで検索してもほとんど情報は出てこない。
閉鎖されたバスターミナル・営業所
・西営業所(沖縄県那覇市)
・当蔵営業所(沖縄県那覇市)
・小禄営業所(沖縄県那覇市)
・(旧)新川営業所(沖縄県島尻郡南風原町)
1981年に発行された那覇交通の創立30周年記念誌$${^1}$$には新川営業所に関する記述は一言も載っておらず、1993年11月1日時点のバス路線図$${^2}$$にも新川営業所は載っていない。
ただ1990年3月末時点のバス路線一覧$${^3}$$には記載があることから、1981年以降に開設、1993年11月以前に閉鎖された営業所のようである。
そこで詳細な時期を確認するため、1981年〜1993年の航空写真を見てみることとする。
航空写真より少しだけ存在期間が絞れた
1984年11月当時の航空写真を見てみると、バスが数台停車している駐車場と建物があり、これが那覇交通新川営業所だと思われる。なお、参考までに現在の那覇バスの新川営業所の位置も記入してみたが、これと比較すると那覇交通の新川営業所はだいぶ小規模な営業所だったようである。
![](https://assets.st-note.com/img/1668825944859-jsnCaR4JGi.png?width=1200)
(国土地理院の空中写真【OK841X-C12-8】を筆者が加工)
次に1990年10月当時の航空写真を見てみる。この時点でも、1984年と同様にバスと営業所の建物が確認できる。規模も変わっていないようである。
![](https://assets.st-note.com/img/1668825957381-AvUAp6SkRq.png?width=1200)
(国土地理院の空中写真【OK901X-C26-8】を筆者が加工)
1993年12月当時の航空写真を見てみる。この時点では、建物は確認できるが、バスが全く見あたらない。前述の1993年11月時点の路線図からすると既に廃止された後であることから、廃止直後なのかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1668825967996-4PckFBZLRA.png?width=1200)
(国土地理院の空中写真【OKC931-C50-15】を筆者が加工)
航空写真からは、1984年~1990年時点では存在していたことが分かったが、結局詳細は分からず。
新聞記事から存在時期が判明
ネットでの検索結果は限界があるため、昔の新聞記事を捜索してみたところ、どうにか設置時期と廃止時期を見つけ出した。
1983年6月に設置
1983年6月30日付の沖縄タイムスに「銀バス、市内路線を大幅再編」という記事があり、その中で新川営業所の設置に関して書かれている。要約すると以下の通りである。
実施日は1983年7月10日
三重城営業所を起点とした長大路線の解消のため、起点を三重城営業所集中から、東西南北に分散する方針。1983年1月に設置された南の小禄営業所、北の石嶺営業所に引き続き、東は新川営業所を設置。
新川営業所の発着路線は下記の3路線。
12番・末吉線(三重城営業所~開南~古島~儀保~山川~当蔵~鳥堀~新川営業所)
13番・牧志線(三重城営業所~牧志~山川~儀保~鳥堀~新川営業所)
14番・泊線(三重城営業所←泊高橋←山川←儀保/当蔵←鳥堀←新川営業所) ※新川営業所発のみ設定
上記の新聞記事より、新川営業所は1983年7月10日の開設であったことが分かった。また、開設時の発着路線は3路線だったようで、当時、三重城営業所を起点とし、首里地区(鳥堀~山川~儀保)を一周して折り返す3路線が新川営業所まで延長され、発着路線となった。なお、12番・末吉線はこの時に牧志経由が廃止となったようである。
![](https://assets.st-note.com/img/1721561479638-Qee6zxzKqG.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1721561282098-hh3eTLNiL3.png?width=1200)
1986年8月に路線再編
次に変化が起きたのは、その3年後である。
1986年8月12日の沖縄タイムスに「那覇市内の路線再編」という記事があり、その中で新川営業所を発着する路線の再編に関して書かれている。要約すると以下の通りである。
実施日は1986年8月12日
利用者が激減していた1番・寄宮線を廃止し、真和志方面から牧志・首里方面、首里方面から開南・識名方面へ乗り換えなしで行ける路線として1番・首里識名線を新設。
1番・首里識名線の運行開始に伴い、13番・牧志線は首里地区での折り返しに変更。
14番・泊線は、新川営業所発から石嶺営業所発着に変更(三重城営業所→石嶺営業所の便も設定)。
13番・牧志線はわずか3年で元の首里折り返しの経路に戻ってしまった。新しく開設された1番・首里識名線とは大半が被ることになることから、新川~首里間はどちらかあれば良いという判断か。また、この時に14番・泊線は石嶺営業所発着となっており、これは那覇交通最後の日までこの経路であった。一方で、12番・末吉線については言及がないことから、そのまま新川営業所発着路線として残ったようである。
この時の再編で、新川営業所を発着する路線は2路線になっている。
![](https://assets.st-note.com/img/1721561294488-12IU7b21yB.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1668826294725-EfYcOkyNr7.png?width=1200)
1993年2月に廃止
そして新川営業所の廃止は、その約7年後である。
1993年2月27日の沖縄タイムスに「銀バス、四路線を一部変更」という記事があり、その中で新川営業所の廃止に関して書かれている。要約すると以下の通りである。
実施日は1993年3月1日
新川営業所は2月28日をもって廃止。1番・首里識名線は新川営業所の廃止により、3月1日より三重城営業所を起終点とする。
12番・末吉線は、3月1日より起点を三重城営業所から具志営業所に変更する。県庁前以降は現行経路。小禄地区に公営住宅やショッピングセンターなどが建設され、開発が進んだことに伴うもの。
この時の再編で、新川営業所は廃止され、営業所を起終点としていた1番・首里識名線は、三重城営業所起終点に変更されている。
もう1つの新川営業所発着路線であった12番・末吉線は、起点が三重城営業所から具志営業所に変更されているが、県庁前(開南)以降の終点側では現行経路とされていることから、営業所は無くなったものの、新川終点であるのには変わりなかったようである。
1986年以来、2路線のみの管轄であった新川営業所であるが、この2路線ためだけに営業所を残す必要はないという判断だったのかもしれない。
![](https://assets.st-note.com/img/1668826298783-pVDfDXorDI.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/img/1674399492708-QO6MUBubum.png?width=1200)
約9年半存在した営業所
以上より、新川営業所の存在期間は、1983年7月10日~1993年2月28日の約9年半であった。
また、偶然ながら発着路線も把握ができたので、ウィキペディアの「沖縄本島のバス路線」の項目の記述と照らし合わせてみる。
旧1:首里識名線(運行:那覇交通)
廃止日不明。新川営業所(現在の新川営業所とは別の場所にあった)を起点とし、那覇市中心部・首里地区を通り、一周して新川営業所へ戻る市内循環路線。両方向に運行しており、1周の所要時間は約1時間30分であった。新川営業所の廃止に伴い、発着地が三重城営業所に変更となった(後述)。
旧12:末吉線(運行:那覇交通)
廃止日不明。三重城営業所 - 新川営業所間を開南・那覇市立病院前(現在の末吉公園前)・儀保・山川・鳥堀経由で結ぶ路線。新川営業所が廃止されたのに伴い、起点が三重城営業所から具志営業所に延長され、具志営業所の担当となった。
1番・首里識名線の記述は正しいようだが、12番・末吉線の『新川営業所が廃止されたのに伴い、起点が三重城営業所から具志営業所に延長された』という記述は、『新川営業所が廃止されたのに伴い、』に関しては微妙である(小禄地区の開発進展に伴う起点変更のため)。なお、12番・末吉線の終点側が再び首里折り返しの経路に戻ったのは、1994年10月1日のことである$${^3}$$。
なお、13番・牧志線、14番・泊線については、そもそも新川営業所を発着していたことすら記述がない。
ちなみに2009年11月6日時点の航空写真も載せておく。那覇バスの新川営業所が既に運用されているが、これと比較すると那覇交通の新川営業所は、営業所とは名乗っていたものの、やはりだいぶ規模は小さかったのが確認できる。
![](https://assets.st-note.com/img/1668825979320-RUeGP6CXHl.png?width=1200)
(国土地理院の空中写真【COK20091-C6-24】を筆者が加工)
なお、営業所跡地は沖縄県小児保健協会が管理する月極駐車場となっている。
注釈
那覇交通株式会社創立30周年記念誌(1981年4月 那覇交通発行)
運賃及び粁程表 平成5年11月1日改定(1993年 沖縄県バス協会発行)
銀バスが運行を変更 ー那覇市内線ー 週休2日制度に対応(1994年9月30日付 沖縄タイムス)