カビ博士

カビ毒対策のサプリを以前ご紹介しましたが、カビ毒に関する書籍ってあまりありません。
例えばAmazonなどで「カビ毒」とか「マイコトキシン」などで検索してもほとんど出てきません。
ちょっとこれにはびっくりしてしまいました。

カビによる健康被害というのは確実にあるのに、本もあまり出版されていないとなれば一般の方にはほとんど周知されていないのかもしれません。
いや、なんとなく「体に悪そう」くらいは感じているかとは思いますが…。

ただ以前紹介したように、癌とも強く関係のあるカビ毒があるのも事実です。
恐れすぎは良くないし、ほとんどは無害なものではありますが、注意しなければならないのも事実です。
特にカビ毒は目に見えませんから。
カビの部分だけ削ればOKということでもありません。

今回は一冊の本を紹介します。

カビの取扱説明書 (角川ソフィア文庫)

カビ研究の第一人者が書いた、カビ博士の一般の人向けの本です。
一般の人向けといっても、結構マニアックな内容がありますので、ぜひ読んでくださいということでもありません。

自分がこの本を買ったとき(数年前)は文庫本が出版される前で、単行本サイズ(B6判?四六判?)でした。その帯には
『スマホに生えるカビは嫌だけど、食べるカビは大ブーム!』
と書いてあり、興味がそそられて購入しました。

この本の第六章に「カビは体にどのくらい悪いのか」という感じで、カビ毒についての記載があります。

ここでカビ毒の基本的な知識として、急性毒性というのはあまりなく、慢性毒性が問題になることがほとんどです。
カビが生えた食品を食べ続けた場合に問題になります。
だからやっかいなのですね。
食中毒のようにすぐに反応が出ればいいのですが、毒が入ってきているのに気づかないで食べ続けてしまう。
そして何年後、何十年後に病気として発症する。
まだまだわかっていない菌もありますし、あまり神経質になりすぎてもよくありませんが、少しは気をつけたほうが良いと思います。
特にアフラトキシンのように既に知見のあるカビ毒に関しては、注意した方が良いでしょう。

この本にはカビ毒の中で、「オクラトキシン」についても書かれています。
これは腎毒性があり腎臓癌などの原因になります。

『オクラトキシンに汚染されている食品は幅広く、大麦、小麦、トウモロコシなどの穀類や、豆類やコーヒー豆、さらには肉、乳製品などが知られている。また、オクラトキシンはイタリアやフランスのブドウ果汁からも、さらに多くのワインからも検出されている』

なんて書いてあります。
穀類なんて輸入しまくりのものですね。
ワインも同様です。
トウモロコシを使ったものなんてたくさんありますね。

ちなみに日本においてはオクラトキシンの規制値は存在しません
一方、EU、中国、台湾には規制値があります。

「食品からのオクラトキシンの摂取が一般的な日本人の健康に悪影響を及ぼす可能性は低い」との理由からだそうですが、TPPなどで輸入品が増えたときに本当にすべて調べきれるのか心配です。

カビ毒の怖いところは、加工・調理しても残存することです。
また畜産において、飼料に含まれるカビ毒が牛や豚、ニワトリを介して、牛乳、肉、卵、その他加工食品となって、口に入る、という経路も存在します。
つまりはただ平飼いのニワトリだから良いとも言えなく、どんなエサを食べているか、も重要になってきます。

畜産の飼料って一般的には輸入トウモロコシや大麦、小麦などが使われていたりしますからね。
時間かけて遠くから運ばれてくるものはリスクが伴います。

ちなみに円安の影響もあってか、国産飼料への切り替えも一部進んでいるようです。

円安で輸入穀物の価格高騰 畜産農家は国産飼料への切り替えも

輸入から国産へ 飼料用トウモロコシの収穫 宮城・大崎市(動画ニュースです)

何も問題ないときは相手国(特に米国)には言いにくいでしょうけど、円安を理由にどんどん国産飼料に替えていったらいいのにと思います。
経済的にも国民の健康を守るためにも(リスクを減らす)良いと思うのですが。
結局こういうのも、国会議員だとか官僚の個人的な利権によって進みません。

日本がオクラトキシンを規制しないのも、輸入が多すぎて検査しきれないから、というのもありそうです。上記の通りオクラトキシンが含まれる可能性のある食品は多岐にわたりますから。
勝手な想像ですけど。
それに規制し始めたら引っかかるものが多くなってしまい、食に大きな影響がでてしまう、というのもあるかもしれません。

気にしすぎたら何も食べるものがなくなってしまいますが、やはり新鮮なものを食す、ということが重要なのではないでしょうか。
海を越え遠くから運ばれてくるものを食べるというのは不自然なのです。
食べたきゃその国に行って食べろ、という話です。
カビ毒に関していえば。

さて冒頭で紹介した「スマホに生えるカビ」ですが、とくにスマホケースです。
パカッとスマホケースを外すと、隅っこにちょっとホコリが溜まっていたりしますね。
「いたりしますね」ってさもみんなのスマホケースにいるような書き方ですが、自分のにはちょっと溜まっていました。
そんなところにカビが生息しているようです。
あいにく自分はときどきパカッとケースを外して、アルコールのウェットティッシュで拭いていたりしていましたが。

本には「カバーの弯曲した部分に溜まっている」と書かれていますがまさにその通りです。
一度も外して見たことがない人はぜひ見てみてください。びっくりするはずです。
ちなみに
『カバーの内側のカビは外部に漏れることはほとんどないので、健康に影響があるとは考えられない』
とのことです。私見らしいですが。

ちなみにこの本には他に、冷蔵庫や食洗機、洗濯機、エアコンのカビについても書かれています。
カーエアコンについても書かれていますが、
『夏の炎天下でもいつも屋根のない駐車場に停めていれば、エアコンの内部が乾いてカビ数は少ないというデータもある』
とのことです。
カーポートとかガレージとか憧れますが、無ければないで健康維持に寄与しているかもしれないという良い側面もあるようです。
奥が深いです。

さて住宅など環境中のカビが人体に及ぼす悪影響は、喘息や過敏性肺炎、アレルギー性肺炎など呼吸器系疾患、あるいはアレルギー疾患が多いようです。
また水害・水漏れなどで住宅がやられてしまったあと、「スタキボトリス」という住宅に生える最も危険なカビと恐れられているカビが発生してしまうことがあります。
日本でも壁紙などにしばしば見られるようです。
大発生した場合、頭痛、倦怠感、呼吸障害などが起き、以前には突発性肺胞出血の小児患者が多く発生し、36名の患者のうち9名が亡くなってしまった出来事が米国でありました。このときも住宅が水害に見舞われたあとだったようです。

日本においても水害がたびたび起きていますね。
そのあとの健康被害も注視していかないといけません。

カビからは様々な化学物質が分泌されますが、その中には「微生物由来揮発性有機化合物(MVOC)」というものがあります。
匂いのする気体だそうです。
米国環境保護庁は、スタキボトリスから発生するMVOCがアレルギーの原因物質であると指摘しています。

「揮発性有機化合物」といえば、ワクチン臭の正体ではないか説もありました。
シェディングによってアレルギー症状と思われる咳発作もありますが、やはりワクチン臭の成分として揮発性有機化合物が含まれる可能性はあるかもしれません。
ワクチン臭を出している人には申し訳ないですが、体全体をカビに置き換えると、「微生物由来揮発性有機化合物」ならぬ「生体由来揮発性有機化合物」を出しているのかもしれません。

冒頭で紹介した本の著者である浜田信夫氏は本の中でこのように書かれています。

『私は、菌類の生態を研究して40年余りになるが、わからないことがあまりに多い。肉眼で観察できる生物の生態ならまだしも、見えない微生物の生態を解明するのは至難の業である。また、環境条件のどの要因がカビの生育に大きく作用したかを究明できる水準にまで、微生物生態学は達していない。』

謙虚です。
謙虚な研究者は信頼に値します。
知らないこと、わからないことを素直に認め、それをいまだに追究していると言える研究者です。

わからないことがあまりにも多いのは細菌やウイルスについても同様です。
(そもそもエクソソームをウイルスとしているという根本的な間違いがある可能性が高いですが)
ウイルスや細菌についてまだまだ知らないことばかりが多いのに、あたかも知った風な感じで解説している専門家もどきが多かったですね。
この数年間。
なんなら微生物学や感染症の専門家でもなんでもない人が、あたかも専門家のフリして解説していたりする。
正真正銘の「専門家もどき」ですが、恥ずかしくないのかね。

住環境のカビなどについては極度に恐れる必要はありませんが、大量に長期間吸っているとやはり健康被害を生じる可能性が高くなります
エアコンもかなり普及してきましたが、何もメンテナンスしていないとたっぷりとカビをこさえている可能性が高くなります。
洗濯機しかり、メーカーもいろいろと工夫はしているようですが、カビが生えてしまうのは必至のようです。
便利なものを使っても、結局は苦労もついてきちゃうのですね。
少しのカビも嫌というのなら、昔ながらの洗濯板で洗濯するしかなさそうです。

食べ物に関してもそこまで敏感になる必要はありませんが、知識として知っておいた方が良いのは確かです
漫然とカビ毒を摂取していれば健康被害が起きますし、最悪の場合は発癌につながる可能性があります。
あるいは認知症も関係しているともいわれています。
見えない分、リスクのある食品を食べ続けるというのは避けた方が良いかと思います。
特に輸入物のナッツ類です。
糖質制限を推奨する人たちは特に、「おやつ代わりにナッツ類を」なんてよく言いますからね。
その都度では基準値以下であっても、チリも積もればどうなってしまうかわかりません。
蓄積性があるのかわかりませんが。

カビ毒に関する一般的な本はあまりないのですが、国立医薬品食品衛生研究所のスライド資料がありました。
カビ毒についてまとまっています。

かびとかび毒

冒頭に書いたとおり、「カビ毒」に特化した書籍などあまりなく、カビ毒の危険性について詳しく知らない方も多いのではないかなと思います。
超大量に体内に入れば急性の症状が出るかもしれませんが、問題になるのは長期的に吸い込んだり食べたした場合の健康障害です(慢性毒性)
現代は海外からの輸入作物(トウモロコシ、小麦、大麦、コーヒー豆、ワイン、ナッツ類などなど)が増えたり、気密性の高い住宅が増える、エアコン設置が増えるなど、昔に比べカビの影響を受けやすい環境にあります。
まだまだわからない部分もあるのかもしれませんが、現段階で毒性がはっきりしているカビ毒(アフラトキシンやオクラトキシンなど)についての知識は得ておくべきかと思います。

一方でウイルスも細菌もカビも、いいものもいれば悪いものもいます。
カビだって見た目は嫌ですけど、悪いものから守ってくれるものもあります。

カビ毒や致死性のウイルス・細菌など悪者を知っておくことは必要ですが、なんでもかんでもすべて毛嫌いするのではなく、過度に恐れず共生していくことが大切です

とか言いながら、これからスマホケースをはずしてふきふきしますけどね。

※スマホのカビは夏より冬の方が多いそうです。
スマホは発熱しているので冬でも暖かく、カビの繁殖には好適なようで。
一方夏は暑くなりすぎて、逆にカビはバテて減ってしまうそうです。
これからの季節は要注意です。
年末の大掃除にはぜひスマホケースも加えてあげてください。

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