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No.508 あなたの人生歌(応援歌)は何ですか?

随分前の中学1年生のクラス担任をしていた時のお話です。某女生徒の「学習計画ノート」の中にあったコメントが、とても興味深く思われたので紹介します。今や彼女も20代後半のはずです。

「昨日は、夜の1:00まで学校の英語じゃない英語の勉強をしていました。私は、もう午後11:00ぐらいから眠たくてたおれかかっていたので、私の好きなザ・ビートルズの”A Hard Day’s Night”を聴きました。すると、『頑張らんといけん。眠っちゃいけん。』というという気持ちになり、すぐ目を覚ますことができました。人は、気持ち次第で変われるんだなと思いました。出来ないことなんかないと思いました。」

このザ・ビートルズの3つ目のアルバム「A Hard Day’s Night」は、1964年(昭和39年)の曲です。私は10歳でした。ところが、その曲に半世紀以上経っても12か13歳の少女が励まされるのですから、音楽の力の大きさ、ザ・ビートルズというグループの歌詞やサウンドの凄さを思い知らされるのです。
 
この曲の誕生秘話が面白く、そのタイトルは、リンゴ・スターがスタジオでの仕事に忙殺された時に、「ア・ハード・デイ」と呟いたらしく、折しも外はすでに暗くなっていたので「…ズ・ナイト」と付け加えたというのです。超売れっ子の彼らには、いかにもありそうなエピソードです。その歌詞の内容は「一日中懸命に働いても、家で愛する人に会えたらハッピーになれる」というものです。翻訳がありましたので、こちらも紹介します。
 
Written by Paul McCartney & John Lennon
♪ It’s been a hard day’s night
 And I’ve been working like a dog
 It’s been a hard day’s night
 I should be sleeping like a log
 But when I get home to you
 I find the things that you do
 Will make me feel alright

♪ ホントにキツい一日で、もう夜さ
 犬のように働いたよ
 ホントにキツい一日で、もう夜さ
 あとは丸太のように眠るだけ
 でも君が待つ家に帰れば
 君が色々してくれて
 僕の心も復活するんだ

重苦しく、クタクタで、けだるさの漂う労働の歌詞なのに、曲は覚えやすく、リズムは軽やかで、フンフン鼻歌でも歌いたくなるような明るさに包まれているのです。それは、安らぎの家庭、好きな人のいる、命を吹き返せる家があるからでしょう。女生徒は、その歌詞に勉強でグロッキー状態の自分を重ね、そのリズムに希望を胸に中学受験を乗り越えた「心」を思い出し復活したのかもしれません。その感性にも惚れ惚れしてしまいます。

誰もが、愛唱歌や記憶に残る歌や励まされ癒される歌、叱咤され鼓舞される歌、辛い別れや悲しみの曲を抱いて共に生きているのではないでしょうか。ちょうど、庭師であった義理の父が村田英雄の「夫婦春秋」を人生の愛唱歌としていたように。私の大好きな歌は、渥美清の「泣いてたまるか」です。