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No.604 送り主は、一人に商品を届け、もう一人に真心を届けました。

「配達員さまへ
 いつも迅速で丁寧な配達をありがとうございます。
 今回も大変お世話になります。どうぞ、よろしくお願いします。」
 
そんなお心遣いの手作りシールが小手荷物郵便の住所の表書きに貼られてあったのは、カミさんの依頼でメルカリ商品を送り届けてくれた某女性からのものでした。

受け取った私でさえ、そのシールを見て何か心の温かくなるものを感じました。ましてや、毎日の猛暑の中を、汗しながら慌ただしく配達して回る人々にとっては、一服の清涼剤のように爽やかな気持ちがしたのではあるまいかと想像するのです。

もっとも、住所以外に書かれているものがあったとしても、じろじろ見るものではないということは配達員にとっての不文律かも知れません。それでも「配達員さまへ」と明記しており、読んでくれることを前提に書き記した送り主の心のほどが直に伝わってきます。

一体、どんな女性なのだろうと想像し、妄想癖のある私などは誰からも止められない脳内ファンクラブを勝手に作り、五色のテープを投げまくりたいような心境になるのです。

さて、「メルカリ」とは、同社の説明によれば、
「『マーケット』の語源であり、ラテン語で『商いをする』(mercari)」
という意味に由来するそうで、なかなか巧みなネーミングです。
 
その命名の路線を受け継ぎながら、送り主のメルカリさんは、「郵送手段を借り」ながらの「mail借り」です。そして、配達員の手を借る事への感謝を伝えようとするのです。心憎い技の持ち主です。
 
依頼主には商品を、そして、配達員には真心を届けた心惹かれるその女性が関東にお住まいだと知ったのは、一昨日のことでした。

カミさんは、笑顔で封を開けました。