No.1236 心のひだ
♪ル~ル~、ルルル~
ルルルル、ルルル~
ルルルルルル~
ルルル~ル、ルルル~
このところ、散歩していると頭の中にBGMのように流れてくる曲があります。韓国の歌手チャン・ユンジョンさんの「約束」です。
今年4月から再放送されている韓国時代劇「イ・サン」(全77話、2007年)をBS日テレで初回から見続けています。
「朝鮮王朝史上、最も波乱万丈の生涯をおくったイ・サン、第22代王・正祖(チョンジョ)の半生を描いた超大作。」
という触れ込みです。
李氏王朝・第22代王・正祖(1752年~1800年)の時代は、日本では、江戸時代中期~後期に当たり、与謝蕪村(1716年~1784年)や本居宣長(1730年~1801年)伊能忠敬(1745年~1818年)などが活躍した時代です。そのドラマ「イ・サン」の中で繰り返された挿入歌が「約束」です。
老論(ノロン)派の陰謀によって父・思悼世子(サドセジャ)が刑死に処させられる直前に11歳のイ・サンは、宮中で同年代のソン・ソンヨン、パク・テスに出会い、身分を超えた固くて強い友情を結びました。その後、ヨンソンは宮中の図画署の茶母(タモ、下働きの女性)となり、テスもサンの護衛部隊の武官として奉仕し、サンを支え続けます。サン自身も彼らとの再会を心から喜び、2人を温かく見守りつつも、いつしかソンヨンに情愛を抱くようになります。
サンは宮中内の重臣たちから「罪人の息子は王になれない」と批判されます。祖父・英祖(ヨンジョ)から父の遺志を継いで「聖君になれ」と命じられます。ところが、頼みの英祖が認知症を患い、突然王宮から姿を消します。もう、ズキズキ・ワクワクではなく、ハラハラ・ドキドキが止まりません。25歳で即位するサンのその後は?慕い合うソンヨンとの関係は?そんな二人を支えるテスは?
そんなチャン・ユンジョン(1980年~)さんの「約束」は、歌謡力もさることながら、日本人の私からすると何だか懐かしく切なく深く胸に響き心を打つ歌です。彼女は「トロット歌手」だとその人物紹介にありました。
「トロット」とは、大韓民国の音楽の一つで、日本の韓国統治時代に入ってきた演歌から派生したジャンルだそうです。日本では韓国演歌とも呼ばれるらしく、暗い歴史の中から産声を上げたトロットは、だから、日本人の心の奥底に響く力を持っているのでしょうか。それは、切ないほどの魂の叫びのようにも聴こえます。
その「約束」の日本語の訳詞には、次のようにありました。
「約束」
覚えていますか
切ない 出来事を
あなたのいらっしゃる日を 待ちながら(数えながら)
しばらく後に その心が 分かったのです
あなたの心は 私のそばにないことが
もう会えませんか
愛してはいただけませんか
あの深い想いは幻だったのですか
忘れないでください
この切ない愛が恋しい日には 私がそばにいることを
私に会えませんか
愛してはいただけませんか
あの深い想いは幻だったのですか
このままだめですか
帰り道を忘れましたか
あの深い想いは幻だったのですか
忘れないでください
切ない愛が 恋しい日には
私がそばにいることを
この曲は、イ・ソジン演じる正祖イ・サンとハン・ジミン演じるソン・ソンヨンの純愛を、素晴らしいリズムと哀切な歌声で歌いあげたものでしょう。ソンヨンの純粋で控えめな愛が、染み込むように心の奥底にまで広がっていきます。
しかし、私は、イ・サンの妻であるパク・ウネ演じる嬪宮(ピングン)の複雑な心境もこの歌には投影されているのではないかと思えてなりません。
嬪宮は、思いやりがあり優しい性格の女性です。イ・サンの信頼も厚く、2人は夫婦として互いに尊重し合っています。しかし、イ・サンが愛するのは図画署の茶母のソンヨンであり、嬪宮の心中は正直穏やかではなかったはずなのに、王朝がうまくゆくために子をなせない自分よりも、ソンヨンを尊ぶ存在として受け入れようとするのです。
彼女が登場するシーンは、どれも痛いほどに複雑な心境を、声にも表情にも出さずに耐え忍び、それが自分の運命であり使命であるかのように振る舞おうとするのです。「約束」の切ない響きは、サンとソンヨンの切なくも秘める恋の心と、サンの妻・嬪宮の哀切な愛情の心の襞が二重写しになっているようです。この二人の関係も目を離せない展開となりつつあります。
毎日17時から19時まで2話(プロ野球中継のある日は17時からの1話のみ)放送されます。大相撲も始まり、嬉しい悲鳴を上げつつ、17時までには万障繰り合わせて帰宅し、「心待ち」の時間を楽しんでいます。
※画像は、クリエイター・めがねさんの「韓国の水原市」の唐辛子の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。