見出し画像

No.1301 野わきかな

平櫛田中(でんちゅう、1872年~1979年)は、高村光雲や朝倉文夫などと並び称される彫刻家です。享年108で大往生しましたが、
「100歳を超え長命であったが、死の直前まで創作を続けた。」
「没後のアトリエには、なお30年以上続けて制作できるだけの彫刻用の材木があった。」
などというエピソードがあるほどの恐るべき芸術家だったそうです。
 
また、90歳で文化勲章を受章した時、
「貰うのは、棺桶に入ってからだと思っていました。」
と言って記者を笑わせるお茶目な一面もあったと言います。

その彼には、有名な言葉があります。
『いまやらねばいつできる わしがやらねばたれがやる』
『六十七十ははなたれこぞう おとこざかりは百から百から』
私なんか、髪は抜け、目は見えにくく、入れ歯はガクガク、右耳は遠く、記憶は薄れ、物忘れに磨きがかかり、坐骨神経痛で足腰がシビレ、血圧と前立腺の薬を毎日押しいただいている「鼻たれ小僧」です。そんな者が「男盛り」に至るのは、そりゃもう、やえーこっちゃありません。

大手予備校の某先生の口癖「いつやるの?今でしょう!」は、一世を風靡する扱われ方をした時代がありましたが、平櫛田中のあの言葉の世界を下敷きにしていると思われます。ご本人が種明かししているかどうかは、知りませんが…。

わが同僚だったT先生も平櫛の名言を引きながら、生徒たちにはっぱをかけていました。「今やらなくて、いつやる?君でなくて、誰がやる?」
と鼓舞したのです。当時の生徒たちは、ウンザリした表情を見せましたが、社会人となってから、T先生の言葉の意味を強くかみしめたこともあったのではないかと想像します。

これはネットの記事にあったお話です。
ある会社のモットーが、看板に掲げてありました。
「キミがやらなきゃ、誰がやる!」
は、社長から社員たちへの励ましの言葉だったといいますが、ある日の暴風雨で看板の一部が取れてしまいました。
「キミがやらなきゃ、誰かやる!」
偶然の悪戯ですが、暴風雨は看板の濁点をそぎ、社員のやる気もそいでしまったとか。
 
「消点が 笑点となる 野分かな」
自滅型の笑止千万な句でゴメンナサイ。


※画像は、クリエイター・斎藤きのうさんの「暴風雨で傘が飛ばされそうな人」の1葉をかたじけなくしました。お礼申し上げます。これから台風の季節、用心しましょう。