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No.1381 神楽の思い出

40年近くも昔のお話です。生徒会顧問だった私は、文化祭の目玉企画として「お神楽」の上演を思い立ちました。大人の神楽社ではなく、大分県立由布高校郷土芸能部の神楽を披露していただくことは出来ないかとお願いをしに行きました。
 
文化祭が平日の催しとなるので、郷土芸能部の生徒さんたちの協力を得られるか不安至極でしたが、顧問の先生や校長先生が、
「伝統芸能の素晴らしさや、うちの生徒たちの活動を知って貰うのは願ってもない事」
と快諾いただきました。ある意味長閑な時代で、おおらかさがありました。
 
演目は「おろち退治」です。囃子方(大太鼓・小太鼓・鉦・笛)の巧みな演奏、舞い方の老父母の笑いを誘う振り付け、クシナダヒメの妖艶な舞い、スサノオノミコトの堂々として荒々しく勇壮な姿、迫力ある大蛇との格闘シーン等々、同じ高校生が演じる神楽の舞台を初めて観た生徒たちの感動が、大きな歓声と拍手で伝わってきました。

YouTubeで「令和6年 8月 卒業公演 由布高校郷土芸能部『大蛇退治』」を観ることが出来ます。最新映像です。よろしければ、ご鑑賞ください。
 
さて、9月に入ると、五穀豊穣に感謝する秋祭りが行われます。県内のあちこちの神社から「神楽」の太鼓の音が聞こえて来て、そのリズムにウキウキしてしまいます。
 
神楽好きの私は、それまで宇佐神宮で行われていた「伝統神楽大会」を何度か観に行きました。しかし、昭和天皇の容体悪化が伝えられた1988年9月19日以降、歌舞音曲などの「自粛ムード」が漂うようになりました。その年の宇佐神宮での神楽大会は「自粛」され、伝統の明かりが消えました。そして、昭和天皇は、1989年(昭和64年)の1月7日に崩御されました。
 
私が好きな神楽は、民間に伝承されて来た「里神楽」です。大分県内には多くの神楽社がありますが、大きく二つの系統から成るそうです。 面を付けずに、ご幣や鈴や扇などを持って舞う比較的おとなしい「執り物神楽」と、面を被って神話などを題材に勇壮な物語を舞う「岩戸系神楽」がそれです。神楽社ごとに鬼面が異なり、地域ごとに囃子のリズムが違うところも楽しみの一つです。
 
私の田舎では、神楽の最中に鬼に抱かれて神社の舞台でクルクル回されると無病息災でいられるとかいいました。何人かの子どもたちが赤鬼の餌食となり、グルングルン回されギャン泣きするのを親や大人たちは笑って見物し、大いに子どもたちの不評と不信感を買ったものです。
 
神々への収穫の感謝と言う伝統的な行事ですが、地域に生活する人々が囃子方・舞い方を務め、今もなお地域の若者たちに受け継がれていることを知り、とても嬉しくなるのです。
 


※画像は、クリエイター・ハベレオ通信さんの「高千穂神楽 五穀の舞」の1葉をかたじけなくしました。そのタイトルには「スサノオの殺神事件が、地上に五穀豊穣をもたらせた」とありました。あこがれ続けている高千穂神楽です。お礼を申し上げます。