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No.1208 来るなら来い!

「♪春の小川は さらさら行くよ~」
 
ご存知「春の小川」(作詞:高野辰之、作曲:岡野貞一)は、1912年(大正元年)に発表された文部省唱歌で、『尋常小学唱歌 第四学年用』に採用されました。元の歌詞は、田舎の春の麗しい景色を情感豊かに格調高く歌い上げています。

一、
春の小川は さらさら流る。
岸のすみれや れんげの花に、
にほひめでたく 色うつくしく
咲けよ咲けよと さゝやく如く。
 
その30年後の1942年(昭和17年)、それまで小学4年生に教えられていたこの曲が3年生向けの『初等科音樂 一』に掲載されることになり、文語体を口語体に改めるようにとの命を受けた林柳波(1892年~1974年)が、
「さらさら流る。」→「さらさら行くよ。」
「さゝやく如く。」→「ささやきながら。」
などと一部改めたそうです。私たちが歌っているのは、こちらの歌詞です。
 
その歌詞をさらに改めた私は、
「春の小川はさらさら流る。」ではなく、
「春の小川はチョロチョロ流る。」
という表現がまことにふさわしいオシッコ事情(尾籠な話でスミマセン)で、かのやんごとなきチャールズ3世も罹られた「男の病気」です。
 
「川柳」には、御同病の士が大勢おられると見えて、悲しみを帯びたその句に思わず目が留まってしまいます。
 
「景色より トイレが気になる 観光地」
(2013年、シルバー川柳・優秀作)
 
「行楽地 観光よりも まずトイレ」
(2022年、川柳もどき「行楽」)
 
「名所より トイレはどこだ バスツアー」
(2022年、シルバー川柳・入選作)
 
「古希過ぎて トイレの回数 異次元へ」
(2023年、シルバー川柳・入選作)
 
お医者様の言いつけをよく守る模範生の私は、毎晩2種類の薬を押し頂くようにして飲みながら、異次元のトイレ回数をなんとか抑え込んで「命生き」しています。
 
でも、1時間以上の散歩は要注意です。こちとら犬ではなく、古希を過ぎた頭頂部の薄い紳士ですから、むやみやたらと茂みや電柱や木の幹に放尿などできません。日本は、駅の構内や大型店舗やコンビニエンスストアや公園など無料でトイレを使わせてもらえますが、海外でのトイレ事情はこうはいきません。その点だけをしても有り難い国なのですが、「まずトイレ探し」から始まる観光地巡りも、やえーこっちゃありません。
 
ふと、「トイレの語源は?」と思いついて調べてみると、

 「トイレ」という言葉は英語の toilet の省略形ですが、この英単語は更にフランス語の toilette にさかのぼります。この単語は、「布」を意味する toile に、小さいことを示す接尾辞 -ette が付いたものなので、もともと「小さな布」を意味しました。
 さて、昔、化粧台の上に小さな布を敷いて、その上に化粧道具を並べたようです。そこで、この小さな布、つまり、「化粧台掛」のことを、toilette と言うようになったようです(1600頃)。そして、「化粧台掛」から、「化粧台」そのものを指すようになりました(17世紀)。

「化粧室はどうしてトイレになったか」平塚 徹、京都産業大学外国語学部より抄出

「小さい布」から生まれた「トイレ」です。なーんだ、そうだったんかい!私は、その語源に敬意を表して「ハンカチ」と「ティッシュ」をポケットに忍ばせ、チョコの遺影のネームプレートを首から下げて散歩しています。「来るなら、来い!」の気概で…。


※画像は、クリエイター・しまさんの、タイトル「今年最後の桜(3)」の1葉をかたじけなくしました。その説明に「桜の終わりを告げる様に小川に綺麗な形で流れていました」とありました。大分も、同じような情景が見られます。お礼を申し上げます。