No.547 ジェラートの味や、いかに?
2003年3月1日付けの毎日学級新聞のコラムで、私はこんなことを書いていました。
「し・し・知らなかった!
『ローマの休日』と言えば、銀幕の女王オードリー・ヘプバーンが、スペイン広場のあの階段の中ほどで、美味しそうにジェラートを食べるシーンが有名。間近にあるスペイン大使館にちなんで命名されたスペイン広場だが、ローマを訪れた女性の多くは、ヘプバーンもどきにジェラートをほおばり、同じポーズを写真に収めているのだろうと思っていた。いや、数年前まではそうだった。
ところが、近年、あの階段の途中は、すべて飲食禁止となってしまったのだそうで、階下には、そのことを書いた看板が立っている(私は、テレビの画面で見ただけだが…)。違反者は、警察官から忠告を受けるようである。
観光客のマナーの低下が招いた事情や保全の意味もあろうが、何かジェラートの味が物足りない気がするのではあるまいか。」
すでに20年近くも前に規制のかかっていた世界的な観光名所のスペイン大階段は、1726年に建てられた歴史あるもので、135段もあるそうです。ところが、多くの人が長時間座り込んだり、テイクアウトしたランチを食べたりして、汚したり通行の妨げとなっていたといいます。
そんな理由から2019年7月に、飲食だけでなく座ることもローマ市が禁止することに及んだ記事がありました。違反した場合には200ユーロ(約2万3000円)、また、階段を破損したり汚したりすると400ユーロ(約4万7000円)の罰金が科されると言います。ジェラート1個の値段としては、世界最高かもしれません。
反対する市民も観光客も少なくないようですが、訪れる人々が良識ある行動をとりさえすれば、人々と当局が対立することはなかったのかもしれません。観光地は、今もこれからも美しく残して行くべき人類の文化遺産なのでしょう。
映画やドラマのお陰で誕生した観光名所も、好きな人々にとっては聖地です。聖地巡礼を心の財産にしてきた人も多いだろうと思います。そして、旅に食は不可欠でしょう。「るるぶ」と書いて「観光」と読むようですが、私は、旅の醍醐味を「見る・食べる・遊ぶ」に集約して標語化した名コピーだと思います。
市民と観光客の協力が功を奏して彼らの希望が容れられ、ローマ市が軟化してタガを外してくれる日の来ることを期待します。「食べる・とろける・しのぶ」の「るるぶ」とも言える心の沁みるジェラートが味わえますように。