No.1033 水も滴る?
一昨日、午前7時20分からのNHK・B1スペシャル「大水害 メガシティを襲う洪水・高潮の脅威2019」(再放送。初回放送は2020年3月6日)には、考えさせられることがたくさんありました。
日仏共同制作による世界のメガシティの洪水や高潮対策をルポルタージュした作品です。温暖化による「海面上昇」「大水害」、そして「地盤沈下」の脅威や実態を、ニューヨークや上海やバンコクや東京の事例をみながら、世界の巨大都市が抱える難問や対策を紹介しています。
温暖化によってもたらされる海面上昇や豪雨による大水害が、埋め立て地に建設された都市部を呑み込もうとしています。また、戦後復興のために工場に必要な地下水が際限なく組み上げられましたが、何十年もの間に地盤沈下を引き起こすと言う現実とも向き合うことになりました。
今年も熱中症の叫ばれる暑い夏でした。「のどが渇いた」と気づいてから水を飲むのでは遅すぎるという指摘があります。ところが、温暖化による大きな世界レベルの脅威は、既に「気づき」以上の、深刻で悲惨な状況を生み出しています。
世界中の政治家や官僚や企業は、「努力目標」を叫びこそすれ、平均気温の変わらぬ上昇傾向は、人間の努力をあざ笑うかのようです。世界の国々のトップたちは、何を目的に、地球をどこへ導こうとしているのでしょうか?
日本は高い山が多いわりに国土が狭く、「滝のような川」となります。そのため、豪雨による大水で川が溢れ、氾濫し、土手が決壊し、大きな水害を引き起こします。そんな国にとって、土木の仕事は大変重要です。水をどう制し、どう活用するかは、昔から日本人の遺伝子にも組み込まれているように思いますが、とりわけ、行政の手腕によるところ大です。
もう二昔以上も前に教え子宅を訪問した時のことです。土木の行政マンだったお父さんからこんな話を聞きました。それは、仕事に情熱を傾ける男の哲学のように思われました。
「河川の氾濫を未然に防ぐダムや堤防や河川の掘削整備などを『治水』といい、水を農業用・都市用に活用して、水の量を安定させる大事な取り組みを『利水』といいます。私は、その重要性と大切さを常に忘れないように、長男を『治水』(おさみ)、二男を『利水』(としみ)と名付けました。二つがそろえば、強い力を産みます。」
私のクラスの生徒は、その利水君でした。それこそ水も滴るようなイイ男でした。
このお父さんの心意気のように「治水」と「利水」が活かされた災害の少ない国でありたいものだと思います。不安を呼びかける行政ではなく、不安をなくす行政であるようにと。
※画像は、クリエイター・key-coさんの、タイトル「心に青空を」の1葉をかたじけなくしました。海からの撮影かと思いましたら、「淀川からみた大阪の街」と説明があり驚きました。お礼申し上げます。