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No.696 「たんと売れても売れない日でも 同じ機嫌の風車」

「都々逸」(どどいつ)は七・七・七・五の形式で、江戸時代の末期に爆発的な人気のあった寄席音曲芸人の初代・都々逸坊扇歌(1804年~1852年)が始めたそうです。主として男女の恋愛を題材として扱ったので「情歌」とも呼ばれています。
 
今日は、都々逸坊扇歌が作った唄の中から、いくつか紹介してみます。
「親がやぶならわたしもやぶよ やぶに鶯鳴くわいな」
●父は故郷常陸国の田舎医師でした。扇歌は薮医と卑下し自らを藪の鶯と駄洒落ます。
 
「わたしゃ奥山一もと桜 八重に咲く気はさらにない」
●一本気(木?)な男は色気も多才もない武骨者と言い放つも桜木の誇りがあります。
 
「たんと売れても売れない日でも 同じ機嫌の風車」
●一喜一憂せず、風に任せて回る風車のように自然体の生き方を愛した男でしょうか?
 
「磯部田圃のばらばら松は 風も吹かぬに木(気)がもめる」
●扇歌の故郷磯部村の松の光景を唄っています。松(待つ)のは木(気)がもめます。
 
「諦めましたよどう諦めた 諦め切れぬと諦めた」
●この逆説は凄い。アルゼンチンの作曲家ヒナステラ「物忘れの木」の歌詞のようです。
 
「来てはちらちら思わせぶりな 今日も止まらぬ秋の蝶」
●自然の景色を唄うと見せて、人の世の思わせぶりな女人の薄情な冷たさをディスった?
 
「しの鉢を引っくりかえせばありゃ富士の山 味噌もするがの裏表」
●「しの鉢」は「すり鉢」?「味噌も擦る、駿河」と掛け、鉢を返した見立ての巧さ。
 
「他人(よそ)の人にもこうかと思や お前の実意(まこと)が苦にもなる」
●惚れた弱みの男の本音。他の人にも誠実至極な女性ゆえに男の胸に波風が立ちます。
 
「都々逸もうたいつくして三味線枕 楽にわたしはねるわいな」
●1852年、茨城県石岡市に嫁いだ姉の住居で病没。飄々たる辞世の唄は見事です。
 
明日は、鼻の奥がツーンとする私の大好きな都々逸をいくつか紹介させて下さい。

※画像は、クリエイター・いしまるさんの、タイトル「思い立ってカメ活」をかたじけなくしました。お礼申し上げます。