No.1479 人に成る
「成人の日」は、
「おとなになったことを自覚し、みずから生き抜こうとする青年を祝いはげます日」
として、1948年(昭和23年)に1月15日と制定されました。
1928年(昭和3年)生まれの母は、「成人の日」の面白いことを覚えていました。
「うちが二十歳になる年に、確か『成人の日』が始まったんじゃ。そん時にゃ、常識テストみたいなもんがあっちな、『NHKとは何か?』なんちゅう問題があったのだけは忘れられんなぁ!」
というのです。成人と認められるかどうかの「常識テスト」?ホントに?
NHKのラジオ放送が始まったのは、1925年(大正14年)3月22日のことだそうで、今年で100周年を迎えます。母の記憶が正しければ、「NHKとは何か?」とは、このラジオ放送が始まって23年目をむかえた「日本放送協会」の略ということになるのでしょう。NHKのテレビ放送は1953年2月1日ですから、母の成人の年(1948年)にはまだありませんでした。
母の記憶が確かなものなのかどうか?そんな「共通テスト」まがいのことを、政府や自治体が真面目に行ったとは思えません。母が居た地元の青年団が洒落で行った戯れだったのでしょうか?その役場が行った形だけの示威運動だったのか?杳として分かりません。
1999年(平成11年)1月に、当時71歳の母から聴いた話だったのですが、もっと身を入れて聴き、不明な所をあれこれ尋ねておけばよかった。すでに、母は12年前の2013年に85歳で幽明境を異としています。残念です!
「成人の日」第1号となる1928年生まれの方は、今年97歳です。どなたか成人の時の「常識テスト」なるものがあったかどうか、単なる笑い話なのかどうか、覚えていらっしゃる方はおられませんか?
1月15日の「成人の日」は、約半世紀後の2000年(平成12年)の祝日法改正(ハッピーマンデー制度)によって、1月の第2月曜日に変更されました。そして、2022年(令和4年)の民法の改正で成人を18歳に変更したものの、多くの地域では、まだ20歳を対象にした成人式を開催しているそうです。
2024年11月13日に92歳で永眠された谷川俊太郎氏は、『魂のいちばんおいしいところ 谷川俊太郎詩集』(サンリオ、1990年12月)の「成人の日に」という詩の中で、
成人の日に
人間とは常に人間になりつつある存在だ
かつて教えられたその言葉が
しこりのように胸の奥に残っている
成人とは人に成ること もしそうなら
私たちはみな日々成人の日を生きている…
と歌っています。「成人の日」は特別なものではなく、私たちは、日々、人に成るための「成人の日」を生きているのだ、幾つになっても…。そう述べているように思われます。「人に成る」とはどういうことか、人生の大きなテーマですが、幾つになっても詩人の言葉が追いかけてくるように感じています。
「人生の第何章の初暦」
塙告冬
※画像は、クリエイター・きままな主婦 ゆうこりんさんの、「成人式の前撮り」(奈良若草山)の1葉をかたじけなくしました。
「おめでとう!」「ありがとう!」の心のキャッチボールが聴こえて来そうな美しい絵です。お礼申し上げます。