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No.905 1分間の楽しみ

「拝啓、息子・娘殿!」
は、保護者からわが子へのメッセージです。200字程度の分量ですが、在職中、学級通信にシリーズとして掲載させてもらいました。

そのメッセージを読んでいると、我が子に宛てたものなのに、元気をもらい、勇気を奮い起たせてくれます。普段、見落としたり忘れたりしていることに光を当ててくれます。家族からの文字の肉声は、生徒一人一人に42人もの親がついていてくれるようです。もっとも、一番勉強になったのは、私自身だったことを思い出します。以下、親心のお裾分けです。

A子へ 最近、何に感動しましたか?何か本を読んで、涙を流したことはありますか?時間がないから、受験生だからと言わずに、ステキな時間との出会いをして下さい。「いつも鞄の中には読みかけの文庫本を」と或る本に書いてありました。ミニコミ誌にも、ドキッとする文章があります。
 まだまだ時間はたっぷりとあり、心の引き出しのスペースもあるはずです。今日という日は、もう二度とないという意味を、あなたなりに消化してください。

U子へ 先日、「丸坊主を見たらゾッとする。」と言った文部大臣の話を聞いて、反対に私の方がゾッとしました。先の高校野球県予選での活躍は、在校生たちにかつてない程の勇気と誇りを与えたはずです。
 坊主頭だろうと長髪だろうと、スポーツに勉強に打ち込む子供たちは輝いて見えます。かぶっている帽子は、戦闘帽ではありません。投げているのは、手榴弾ではありません。ボールです。手に持っているバットは機関銃ではなく、ボールを打つバットです!

Y子へ 今年の日本列島は、地震や津波、又、度重なる台風の到来による大雨被害と、悲しいニュースが続きます。人間の死に接した時、日ごろの愚痴や心配事は、何と些細でちっぽけな事かと痛感します。
 私たちは「生きている」ことに感謝し、自分の人生を大切にし、そして、与えられた環境の中で精一杯努力することが大切だと思います。努力する姿こそ価値あるものです。どんなことがあろうと、有頂天になったり落胆したりせず、努力してほしいと思います。

T枝へ 今の私たちの生活は、冷暖房完備の部屋と、温室栽培の農産物で、季節感を味わうことが少なくなっています。受験に追われる毎日でしょうが、ちょっとだけ今の季節を感じてみませんか。稲穂や満月で「秋」を身近に感じてはどうですか。忘れかけていた大事なものを思い出すのではないでしょうか。

K樹へ ある新聞に、こんな記事が載っていました。「一般の風潮」や「時代の流れ」によって判断して進路を決定しても、長い人生の間にどう変わるか分かったものではない。それよりも、自分のやりたいことをやって身につけておくと、それは時代が変わろうとも、自分のものとして揺らぎがないのである…と。
 生涯の中で何度か迎えるであろう選択の道、向き合って、苦しんで、健康に留意し、そして輝いてください。

人生の先輩、経験者が語る言葉の重みを感じます。深い愛に根差した心が感じられます。毎日通信に掲げた保護者からのエールのコーナーを読む生徒たちの、心をとらえた表情を見られる1分間が楽しみでした。


※トップ画像は、クリエイター・たけのこ|SNS漫画&イラストレーターさんの「授業参観の作文発表で起こった恥ずかしい出来事。。。」と説明された1枚です。子供からの内部告発?しかし、お母さん方は、毎日サマンサ(TVドラマ「奥様は魔女」)気分だったのでは?なんて楽しい作品でしょう!お礼申し上げます。