No.692 小春ちゃーん、小夏ちゃーん!
数年前のこの時期、好天気の日に、九州の気象予報アナウンサーが、
「今日は小春日和。小夏日和とも言います。」
という説明をしました。ん???
『徒然草』第155段「世に従はん人は」の中に、その「小春」の言葉が見られます。
「夏になり、夏果てて秋の来るにはあらず。春はやがて夏の気をもよほし、夏より既に秋は通ひ、秋はすなはち寒くなり、十月は小春の天気、草も青くなり、梅もつぼみぬ。」
「(春が終わった後に)夏となり、夏が終わったから秋がやってくるのではない。春は次第に夏の気配を醸し出し、夏の間からすでに秋の雰囲気が通いだし、秋はすぐに寒くなるのだ。十月は小春日和の天気で、草も青くなり、梅も蕾をつける。」
がそれですが、旧暦十月のころのお話です。今でいうなら、11月~12月の頃の好天気を言うのだろうと思います。
しからば、タカラジェンヌのお名前のような「小夏日和」とは?
沖縄では、立冬(11月7日)の頃に、暑さがぶり返すことを、旧暦の10月の頃の暑さの表現として、「十月夏小」(ジュウグヮチナチグヮー)というそうです。その「十月夏小」のことを「小夏日和」ともいうのだということを知りました。
アメリカでは「インデアンサマー」の言葉がありますが、ネットの「コトバンク」に、
「秋ないし初冬に、晴天が続き、日中は高温、夜間は冷えこむ特異な期間をいう。 北アメリカ東部のニューイングランド地方で最もひんぱんに使用される語」
とありました。「小夏日和」と同義でしょうか。
また、ヨーロッパでは「老婦人の夏」という言葉があります。同じく「コトバンク」を見ると、
「中部ヨーロッパで、9月下旬から10月初めのころ現れる顕著な夏の戻りの現象。」
とありました。これも「小夏日和」に近い表現のようです。ちなみに、
「『老婦人の夏』の語源として、小春日和にクモの糸が日差しに輝いて老婦人Altweiberの白髪のように見えるからという説もある。」
とその解説にはありました。
昨日、11月3日は、一部を除き、全国的に好天気で最高気温は20度を超えました。小春ちゃんも、小夏ちゃんも良い日和を過ごしたのだろうなと思いました。
「小春日や石を噛み居る赤蜻蛉」
村上鬼城(1865年~1938年)の季節外れの赤とんぼを詠んだ句だそうです。必死に石にしがみつく赤とんぼが、自分のようにも…。
※画像は、クリエイター・まさひろ写真館さんの、タイトル「小春日和」をかたじけなくしました。汗ばむような日差しです。お礼申します。