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No.1353 1家に欲しい1人

今から10年前になる定年退職1年後の大分合同新聞夕刊の記事に心が癒されました。

新聞社の募集記事のお題は、
「お笑い芸人、クマムシの『あったかいんだからぁ♪』が流行しています。あなたをあっためてくれるものは何?」
というものでした。それに応えた作品です。
 
「社会人5年生の孫は、休日以外のほぼ毎朝7時に『おはよう!』と1分ほどの電話をくれる。元気いっぱいの彼の声を聞くと、1人暮らしの私の心がぽかぽかしてきます。」
(宇佐市・5分前には電話の前に座っているおばあちゃん)
 
「社会人5年生」の出だしが、なんともかわいい、可愛すぎます。思わず、子どもと読み違えてしまいました。毎朝7時に独り暮らしのお婆ちゃんに電話する20代のお孫さんの人となりにもやられてしまいます。5分前には電話を見つめながらじっと心を穏やかに待つお婆ちゃんの姿、電話のベルが鳴るとサッと受話器を取り上げる姿が脳裏に浮かんできて、自然と口元が緩んできます。
 
日本の孫と日本のお婆ちゃん(お爺ちゃん)の心の触れ合いの原型と言いたくなり、頭の中で拍手喝采が鳴りやみません。こういう孫が、一家に一人は欲しいものです。いや、このお婆ちゃんあってのお孫さんか?二人の絆が、「私」を越えて「多くの私」の存在になれたらいいなと心から願います。お婆ちゃんは、今朝も電話の前にいらっしゃることでしょうか?
 
2021年3月の「仁の音」でそんなコラムを書いたことがあります。定年退職後、非常勤講師として働くうちに、「道徳」の授業で知り合った中学2年生の女子生徒から、
「一人暮らしのお婆ちゃんに毎日電話して『仁の音』のコラムを読んであげるんです。とても楽しみにしてくれています。」
といきなり言われたことがあり、驚きと嬉しさで胸が熱くなったことがあります。その彼女は、今年、高校3年生です。どんな人生の青写真(古いか?)を描いているのかな?
 
総務省の「一人暮らしの高齢者に対する見守り活動に関する調査・結果」によると、
「一人暮らしの高齢者数は、男女共に増加傾向にあり、令和2年には男性約231万人、女性約441万人となっている。今後も一人暮らしの高齢者数は増加傾向が続き、令和22年(2040 年)には男性約356万人、女性約540万人となることが予測されている。」
という恐るべき試算まで紹介していました。
 
一人暮らしの老人にとって、家族や知人や施設やボランティアの方々や、近所の子供さんや、その親御さんたちとの交流が、何よりも有り難いことではなかろうかと推察します。
 
昨日紹介したモンゴルのチョコレートを文化教室に持ってきて分けて下さったご老人は、自宅に数百冊の子供向けの本があることから、土日にかけて自宅を子どもたちにミニ図書館として開放しているそうです。そうやって、積極的に地域や子どもたちとかかわりを持って少しでも豊かな時間を過ごそうとしている「心と姿」に深く打たれました。


※画像は、クリエイター・素晴木あい@ AI絵師さんの、千葉市立郷土博物館で撮影した「懐かしいこんな物と、ちょっとむかし話」の1葉です。ありましたねー!お礼を申し上げます。