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No.533 ネットで出合った「大切な宝物」の話

ネットの検索中に、広島県教育委員会のHP「ホットライン教育ひろしま」のページにいざなわれました。そこには、広島県内の人々から寄せられた「心に響くちょっといいはなし」が幾つも紹介されていました。そのうちの一つをご紹介します。
 
「大切な宝物(年齢:30代 性別:男性 職業:公務員 住所:広島市)
祖母が要介護3の認定を受け,入所できる介護施設が見つかり,8月12日に入所しました。大好きな祖母だけに,施設への入所には,複雑な思いがありましたが,介護で疲れ果てた母親の姿を見ていたら,仕方ないことだと諦めました。
 施設入所の為に,祖母の家の荷物を整理したら,軽トラック2台分あり,我が家の駐車場で保管しました。
 祖母は大分の資産家の娘だと聞いていたので,荷物からお宝が出てこないかと興味本意で探ってみました。残念ながら,私が期待した宝物は出てきませんでした。
 しかし,荷物の中から,祖父が祖母に当てた手紙が100通ぐらい出てきました。読んでいいものなのかと躊躇しながら,自分が生まれる前に亡くなった祖父がどのような人だったか興味がわいてきたので,どんなことが書かれているのか読んでしまいました。なんと手紙は,祖父が祖母への熱い思いを綴った恋文でした。
  読んでいくうちに,祖父と祖母は親に結婚を反対され,駆け落ちをして一緒になったことが分かりました。厳しい環境の中で,祖父母の強い愛情や互いの絆の強さが書き記され,当時の様子を想像しながら読んでいくうちに,胸が熱くなりました。手紙の中に仕事のことや,祖母に贈った詩などがあり,祖父は誠実でロマンチストだったのだと嬉しくなりました。まるで,朝ドラになりそうな内容でした。祖母は,その手紙を全て大切に保管していたのです。
  今は,メールで気軽に相手に思いを伝え,簡単に削除しています。祖父の一文字一文字に込めた祖母への強い愛情を今でも大切にしている祖母の思いを考えながら,私自身の生活を振り返り,『もっと頑張らないといけないなあ』と自分自身が情けなくなりました。
  興味本意で探したお宝でしたが,私の心に素晴らしい宝物が届けられました。
  お盆の祖父の墓参りで,宝物への感謝とともに,祖母を見守り続けるから安心してほしいこと,そして,祖父母に恥じない生き方をすることを誓いました。」
 
手紙に書かれた肉筆の文字には、書く人の心のありようや、体温や吐息まで感じられることがあります。この方のお爺さんお婆さん二人の距離感が迫るように感じられるのは、私だけではないでしょう。メールや絵文字やスタンプには、現代人の思いを重層的に伝えることのできる魅力もあるでしょうが、手間暇かけて一文字一文字心を込めて書き、数日かけて思いを届けるという二人だけの時間の往来に、期待高まる心の扉の開く音が聞こえるように思うのです。
 
広島県では、道徳教育の一環で、県内の老若男女のお話をまとめているようです。どのお話にも納得させられたり、教えられたり、感動するものばかりです。興味を持たれた方は、ネット訪問されてみてはいかがでしょう。お陰で、私は思わぬ宝を探し当てました。69歳の5月末のころに。