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No.502 人に言ひつつ道行きをせむ

1998年(平成10年)に24歳でボクシングのプロテストに合格した彼が、29歳で引退するまでの通算戦歴は、15戦9勝(5KО)5敗1分けでした。京都大学医学部を卒業した異色のボクサーだったこともあってか、一躍脚光を浴びたようでした。

その彼が、世紀末の2000年、あるテレビ番組に登場した時、こんな話をしました。
「ゲーテだったか、誰だったか、若い時(子どもの頃)の能力は神様が与えたものだが、年を取ってからの能力は、その人が築いたものであると言っていました。」

「なるほど、そのとおりかもなあ。」
と思わず独りごちてしまいました。彼自身としては、
「これからは、自分の努力次第。精いっぱい頑張ります。どうか、応援してください。」
という意思表示や決意表明のたとえ話だったのだろうと思われました。

たいがい、子どもの頃にいた楽園は、大人になると追い出されてしまうようです。年を取れば、自分で蓄え、自分で築き、自分で創り、自分で切り拓いて行かねばならないのでしょう。私は、どんな人生を築く能力を生み出せるのか、それは、どんな意志を持っていきるのかという生き方の問題でもあるように思いながら聞きました。

「悩める友よ、何を信じれば良いかって?人生を信じろ。本やアドバイザーよりよっぽどまともだ。」
ゲーテは、そんなことも言っていました。信じる為には、黙っていないで自分に言い聞かせながら有言実行すべきなのかもしれません。「信」とは「人に言い」ながら行動することで得られる信用であり、信頼でもあるのかも知れないからです。

 また、今から200年も前に生きたゲーテですが、こんなことも言っていました。
「人間はけだかくあれ、情けぶかくやさしくあれ!そのことだけが、われらの知っている一切のものと人間とを区別する。」(「神性」という詩から。1781年ころの作)
 
世界を紛争に巻き込む指導者たちは、ゲーテから人間扱いされていないようです。