No.637 「アッシ(私)の反駁実験」?
「アッシュの同調実験」とは群集心理の一つだそうで、誤った答えでも他者の多くが認めると自分もそれに同調してしまう事を言います。ある!ある?ある!?
たとえば、衝立てに長さの少しずつ違う三本の直線A・B・Cを引いた紙を貼ります。少し離れた所にもう一本の直線D(実は、直線Aと同じ長さ)もほぼ同じ高さで貼ります。
被験者の10人中9人は、サクラだとします。指名をされて、一人ずつ衝立て越しに初めて見た直線Dが、A・B・Cのどの直線と同じ長さか否かを言い当てます。
前の9人は、わざと次々に一番短い直線Cを解答に選びます。真の被験者である10番目の回答者は、Aが正しいことを疑いながらも「皆が選んだから」という理由で「C」を選ぶそうです。これがアッシュの同調実験というやつです。
第二次大戦中のヒトラーの独裁政権下に限らず、人々は同調を強要され、正しいと思っていても自分の意見を正々堂々と主張することができませんでした。時代は進みました。「自分が正しいと思っていても、誤っている周囲に合わせることで自分を納得させる」という同調を求める傾向は弱まるに違いないと思われた今日の若者世代のはずが、逆に同調し易いという実験結果には、大変驚かされました。どこかの戦争のように…。
若者達が、他人の眼を強く意識しながら生きている世の中である事の証左でしょうか?「出る杭は打たれ、没個性的均一民族」を愛する日本人の風潮は、変わらぬまま世紀超えしてしまったかの印象を強くした「アッシュの同調実験」でした。
「同調」の対義語は、「反論」や「反駁」だそうです。ものごとの正邪を見抜き、「個」が没することのない社会が構成され、そんな風潮が醸し出されるのには、批判精神を磨くことも大切なことなのではないかなと思います。教育とは、一方的にある方向に導くことではなく、ことの是非善悪をつけられる健全な批評精神を育てることでもあるように思います。
世界が共有したい今日の延長線上にある未来の教育の根本的な概念とは何でしょうか?
※9月8日午後、イギリス王室の女王エリザベス2世が96歳でお亡くなりになりました。哀悼の意を申し上げます。