No.968 じゃんけん、ぽん!
ジャンケン(石拳)する時に、「最初はグー」の言い方が流行し始めたのは「8時だョ!全員集合」(TBS放送、1969年~1985年)での、志村けんと仲本工事の「ジャンケン決闘」(1981年~1982年)がきっかけで広まったそうです。ヘーボタン?
ジャンケンと言えば、中国が起源だと思いますが、明の時代(1368年から1644年)に「拳遊び」があり、「猜拳」(さいけん)・「画拳(かくけん)」・「豁拳」(かつけん)などと呼んでいたといいます。 しかし、中国のそれは「三すくみ型」とは言え、生きもの同士の勝ち負けです。
現在の「じゃんけん」は江戸時代~明治時代にかけての日本で成立したとされ、明治時代には石・紙(ふろしき)・鋏を出し合う石拳が普及するようになり、明治26年(1893年)には、石拳の一名として「ジャンケン」の語が存在したともいわれます。
『拳の文化史』(角川書店、1998年12月25日初版発行)という厳めしいタイトルの非常に面白い本があります。早い話が「じゃんけん」の歴史を紐解いた労作です。著者のセップ・リンハルトは、1944年オーストリア生まれの日本学者ですが、1988年に京都大学人文科学研究所で研究していた時の恩師によって開眼されたテーマだそうです。松岡正剛の「千夜千冊」(745話、2003年4月15日)にも面白おかしく紹介されていて参考になります。
私が小学生の頃のジャンケンの合言葉は、
「じゃんけんジャガイモ、サツマイモ。あいこでアメリカ・ヨーロッパ。じゃんけん、ポン!」
という、農村の子ども達にはふさわしからぬ、世界をも意識した気宇壮大(?)なジャンケン法でした。いつごろ誰が考案したものか分かりませんが、前説があり、いきなりジャンケンしたのではなかったと記憶します。
画家の安野光雅(1926年~2020年)が、ミニエッセイ集『算私語録』の中で、ジャンケンについても書いてあります。子供時代に育った津和野地方のジャンケンです。
なんとも「ハイカラ」なジャンケンの掛け声のことを書いています。安野さんは、私よりも27歳年上です。私は大分の片田舎で育ちましたが、西日本のジャンケン言葉だからか、どこか共通しています。
もっとも、ジャンケンには、「手(指)」ばかりではなく、「足ジャンケン」というのもありました。「グー」は足をそろえて立ち、「チョキ」は足を前後に伸ばして開き、「パー」は足を左右に開いて勝負します。飛び上がった時にフェイントをかけながら、面白おかしくやったものですが、「足ジャンケン」に掛け声のような合言葉があったかどうか、思い出せません。今も、足ジャンケンは、子どもたちの間で健在なのでしょうか?
ふと60年以上も前に心がワープしてしまいましたが、なんだかボワッと温かいものが体に流れたような気がしました。
あなたの子供の頃のジャンケンの符丁は、何でしたか?
※画像は、クリエイター・まつかわゆきこさんの、「ジャンケンや手のイメージに♫」の1葉をかたじけなくしました。少し上品なジャンケンです。お礼申し上げます。