漂流するこころ 2
二、夏の午後、誰もが昼寝の夢のなか
ギリシアの戦士のように、その頬に鋭利な影を浮かべ、一等航海士はその瓶を手繰り寄せる
明け方よりも顎の髭はさらに光る
午後遅く
白い蝶の羽が無数の蟻に曳かれてゆく
アスファルトの道路を往く小さな帆船
彼はその帆船の船長
遠い異国で、フェニキアの商人は照り付ける太陽に顔を歪めながら、今日の風なら、そう遅れることもあるまいと、内心安堵しているに違いない
どこへ
誰のもとへ
運ぶのか
その瓶を
彼は、帆の傍らに立ち
そっと、瓶の中身を取り出して
掌にのせ
その、小さく震える
永遠の憂いを
飲み込んだ
彼は
私にとって
救世主