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私は何者か、424


西に針で描いたような三日月。まさか、涅槃の瞼とも見える。山を枕に、薄い朱がかった黄色い眼よ。優しく、やわらかく、半円を描き、微笑むのか。それならば、見つめ返して、その、虜になろう。同じことの繰り返しだと、吐き捨てるように。言ってはならぬ。同じ刻など、一分もないのである。それを知らぬのは、誰のせいでもない、己の哀しみであろう。真似など誰にでもできよう。真似できぬ私になりたいと願う。ひとときもじっとなどしていないのだから、模倣などと、紐解いている間にあちらの世界、こちらの冥界と、目まぐるしくもダンスを続け、その手のひらを、お前は見たか。己を見たか。世界にどれだけの人がいたとして、己はたった私ひとりよ。ひらひらさせて、その手を掴もうと、それはある時は水であり、また、ある時は火となって、捉えることもできやしない。そのくせ、じっとしていれば寄ってきて、囁く。誰のために生きるのか。と。
髪結いの亭主、知っている。幸せはなんだろう。怖いものでもあるのか。背中合わせ。そういえば背中に文字を書く罰ゲーム。壮大な、万里の長城みたいな、長い文字を書く。笑い合って、寝て、覚めて、また、眠る。今度覚めたとき、あなたはほんとうにここにいるのかしら。何も信じない。いや、己だけを信じているのだ。その波の端っこが私の足を濡らす。波の心よ。黒曜石の海岸。キラキラと黒く輝く、心のなかの風景よ。


まだ、歩くのか。


ああ、もう少し歩こう。


猫のモモ太郎もいる。


これは、間違いなく、破格の幸せよ。



わたしは何者か。



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