私は何者か、番外編 a dozen 短歌 41
画のなかの船乗りに会う真夜の海開けば群青朱深緑
春塵のどこが痛いのどこかしらわからぬわからぬ呪文解けず
愛するといふは容易き自分自身こんなに好きでたまらないもの
挨拶を交わすふわりと黄の花が開いて青い鳥は飛び立ち
ゆふぐれのどうしようもないうかうかと水に映して逆さのわたし
蒼く深く私の影にだれか棲む夜のまんなかふっと煌めく
雪解水何もかもが光りだすこんな限りを生に留まり
足首をふと掴まれてそれは多分太宰治と云ふ人かしら
ショパンの別れの曲よいつだったか前にも君が呟いた耳朶
いっぽんの裸木揺れる雪解けの何処までも深く我を呼ぶ水
水仙のラッパ我は飛び越える春の跳び箱もっとも高く
帰れない蕾の開く時を待ち夜の縞々あと七文字よ