漂流するこころ 1
一、 明け方の夢
明け方、夢を見た
ひどい嵐の中を彷徨う船
デッキには独りの痩せた航海士
うっすら顎に髭が光る
私はこころをそっと小瓶に詰め
遠い砂浜から海へ放つ
瓶は波間を漂いながら、嵐の沖まで引き寄せられるように進んでゆく
嵐の中
航海士は波間に瓶を見つけ
そして、そのちいさな瓶を手繰り寄せるために戦う
何と戦う
孤独とはもう戦い疲れたはず
持ち主さえ見放したちいさな心のために
彼は瓶の中のこころにとって
救世主なのかもしれなかった
目覚めたとき
隣に
彼の姿はなく
カーテンの隙間から無限に白い光がベッドを真っ二つに裂くように差し込んでいた
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