私は何者か、番外編 a dozen 短歌 51
君の手の柔らかきを我好きなだけぎゅうぎゅう握るこんなさみしい
その時はどんな時かと聞きたいが我の知り得る時の時なる
ビール飲みしゅわしゅわ喉へ落ちてゆく思い出せないそんな思い出
支えとか支えないとか支えうる人の世ならばそこに在るだけ
その深さ山の高さに同じうす谷の哀しみ溢れ積まれし
自由とは自由ではないそのひとの心のなかの自由な旋律
君を待つ海岸沿いに寂しさの貝殻ひとつ見つけて拾う
木の実食む双葉も食んで私は君の耳噛む痛み分かちて
未来とか過去とかそんな範囲では語れぬこんな歯応え地球
流れより速くもないし遅くもないだからと言ってそれは流れか
今日の月私にだけ見せたのか背中びきーんと響いて軋む
囁けばそれでいいのかまやかしの夜の底まで雨の烟りて