オリーブオイルの味と香り
これまでのコラムで、もうみなさん良質なオリーブオイルがどんなものかご理解が進んできたと思います。このコラムで使うオリーブオイルという言葉は、特に断りがない限り、全て「本当の」エクストラバージンオリーブオイルのことを指します。
オリーブには約1,700種以上の品種があるといわれていて、それぞれがいろんな香りや味の個性を持っています。これもオリーブオイルだけが持っている、ほかの植物油にない特徴の一つ。ゴマ油も菜種油も品種ごとに搾り分けるなんてことは普通ないですよね。
でも現実には品種ごとに瓶詰して販売していることはとても少なく、品種の違いを実感して頂く機会はほとんどありません。
まだワインが日本に普及していなかった1970年代、お肉料理には赤ワイン、お魚には白ワインなんて素朴な分け方をしていました。今ではブドウの品種ごとにピノやらカベルネやらグルナッシュやらと蘊蓄をかたむけてますが、オリーブオイルに関しては、それから50年以上経った今でも「オリーブオイル」と一括り。
実際には、オリーブオイルの香りはまさに千差万別で、いろいろな野菜、果物、木の実の香りにたとえられます。数え上げればきりがありませんが、オリーブオイル鑑定士が良く表現する例えでは、トマト、青リンゴ、若葉、シナモン、アーモンド、アーティチョークなんてのが出てきます。トマトや青リンゴなんてのは分かりやすくていいんですが、アーモンドってどんなん?アーティチョークなんて食べたことないよ、なんて声が聞こえてきそうです。
香りは味覚を決めるとても重要な要素です。鼻をつまんで食べたら、牛肉も豚肉も区別がつかない、って言われるとおり、人間は香りでその味を判断している部分がとても多いのです。ですから、それぞれのオリーブオイルの持ってる個性的な香りは、お料理の味を大きく変えてしまいます。
テイスティングでとてもフレッシュな青い香りでおいしかった、っていうオイルを、きっとおいしいに違いないと思ってお豆腐にかけたら、青臭さだけが強調されてしまった、なんてことが起きることがあります。
ワインで例えるとわかりやすいかもしれません。さわやかなヒラメのカルパッチョに、タンニンの効いたしっかりしたフルボディのカベルネソーヴィニヨンを合わせてもちっともおいしくないですよね。
最近のレストランでは、お料理に合わせてドリンクを変えるペアリングが主流になって来ています。
オリーブオイルも同様で、本来はお料理に合わせてオイルを変えていくべきなんです。
次は実際のオイルの種類ごとのお料理への合わせ方なんかをご紹介しようと思います。