幼き頃の素直な私
確か小学1年生の時、担任の先生に「嘘はついてはいけません」と僕は教えられた。両親からも「素直でいなさい」と育てられ、ああ、なるほど嘘付きはいけないのだ、人はみな素直に生きなきゃいけないのだと子供心に思ったものである。
月日は経ち中学高校と進学するのだが、その頃になって幼少期に教えられたアレはどうも『何か』おかしいという事に気づき始めた。例えば、素直で嘘をつかない僕は不細工な友人に「あなたは不細工だ」と告げた事がある。これが一度だけならいざ知らず、無知で幼い僕の犯行は複数回に及んでしまった。今思い出すととんでもなく恐ろしい話である。さて、そう告げられた友人たちは、大抵の場合、眉間にシワを寄せて首を傾けるのだった。少し怪訝そうな顔をして『こいつは何を言ってるのだ?』という心の声が聞こえてきたものだ。人によっては僕に向かってはっきりと文句を言うこともあった。しかし、である。僕からしてみたら幼少期に教えられたように素直で嘘をつかずにいるだけなのに怒られるなんて、たまったものではない。全く持って不可思議だ。
当時はそんなことを思っていた。今にして思えば無知とはサイコパスに近いものなのではないのだろうか?いい歳したおじさんになった今、時々そのような事を思いつつも、いやはや、もしかしたら自分の中にまだそんな些細なサイコパスが残っているのでは?とも不安になってしまうのである。