人生大決断!―40代のオジサンが臨床心理士を目ざしてみた
はじめに 臨床心理士を目ざしたワケ
それまでの仕事
40代前半までは違う仕事をしていました。
違うといっても、職人とかITとか営業とか運送関係とか、心理学と交差しにくい別世界のことではなく、多少なりとも人間の心と関係ある、人に向き合う仕事、キリスト教系の専門職です。
キリスト教系の専門職といったら、みなさんは何をイメージしますか。
結婚式場のチャペルで思い出す、厳かなローブを身に纏った神父さんでしょうか。
私の場合はかなり違うイメージです。ローブを身に纏ったことは一度もありません。
フリースタイルの牧師です。
キリスト教にあまりなじみのない日本で、
「神父さんなんですね」
と言われて、説明するのにずいぶん苦労しました。
信心といえば宗教的になりますが、やっていることはメンバーさん(信徒)1人ひとりに向き合い、年がら年中、メンバーさんのことを気にかけている仕事です。
かなり前になりますが、すでに売れているお笑い芸人が、これからを目ざす若い芸人を見てこう言っていました。
「24時間、寝ても覚めてもお笑いのネタのことを考えている。それくらいじゃないとね」
プロだなと思いました。
「24時間、寝ても覚めてもメンバーさんのことを考えている」。
そういう自分かなと反省しました。
「寝ても覚めても」といえば格好良すぎると思いますが、自分目線でもなく、専門職目線でもなく、自分が属している組織目線でもなく、どこまでもメンバーさん目線です。
メンバーさんがどうなのかばかり考えていました。
そのとき、一つの問題が浮き彫りになりました。
「自分って何者なのだろう。自分みたいな人間が仕事をしていて、本当にメンバーさんに助けになっているのだろうか」
実際スキルの面から言って、対応できなかった事例がありました。人間を知らなければダメだと思いました。
そしてもっと重要だったことは、人生で何度か挫折体験があり、失敗したからこそわかったこともたくさんありましたが、そのことを通して
「自分って何者だろう」
と考えるようになったことです。その問いに答えを出したいという気持ちのほうが大きかったと思います。
心理学を学ぼう
それで、いくつかの研修会に参加しました。
対人援助について学ぶ1年シリーズの研修会、それだけでは不十分と思い、2年の研修会にも顔を出しました。そこで思ったことは、これでは専門性が足りないということでした。
実際、内容はヴォランティア・カウンセラーのレベルでした。
その頃、研修会の講師をしておられた先生と知り合いになり、
「もう少し専門的に学びたいのだけれども、どうしたらよいですか」
とご相談しました。
先生は、
「本気でやるなら、大学院がありますよ」
と、臨床心理士を目指すことを提案してくださいました。
その先生は交流分析と死生学をご専門にしておられる方で、その出会いは、一生の出会いになりました。その後も何かとご指導をいただいて、感謝しています。
先生のご提案をいただいて、その時は
「そんなこと絶対無理ーッ……!」
と思いました。
なぜなら、一般的なサラリーマンと違ってある程度時間が自由になるとはいえ、当時いろいろな仕事を抱えていました。
そのようなことを団体に話したら、
「40代にもなって勉強したいなど、なにバカなことを言っているんだ」
と、一蹴されると思いました。
それで、「受け入れてくれないと思います」と申し上げたところ、先生は、
「本当にやりたいのなら、ダメ元でお願いしてみたらどうですか」
と励ましてくださいました。
院試に挑戦
頼んでみてダメなら諦めもつくと考え、まず行動を起こすことだと、他の人にはほとんど相談せずに大学院受験を決めました。
そんな簡単にうかるはずもないと思いつつ、通信の予備校に申し込み、あとは過去問を解いたかなと思います。
誠にお粗末な準備で院試当日を迎えました。
自分なりに精いっぱい記述しましたが、心理学の専門科目、その中でも特に心理統計の問題はほとんど書けなかったと記憶しています。
面接試験はガチガチに緊張しました。その場面は鮮明に覚えていますが、何を聞かれたかはまったく記憶にありません。
合格発表までの時間、ヒヤヒヤで過ごしました。
1週間ほどして発表があり、無事合格することができました。
仕事の調整
大学院に行けるキップを手にしたことは言わず、清水の舞台から飛び降りる覚悟で団体に相談に行きました。
事情を説明し、心理学を学ぶために時間をくださいとお願いしました。そうしたら、
「いいですよ」
とアッサリ言われ、思いっきり拍子抜けしました。
人生、諦めずにやってみるものです。
自分の現場の仕事だけ続け、団体関連の仕事はほとんど免除してくれることになりました。
仕事は減りましたが、生活の基盤を失わずに2年間の勉強をすることができました。寛大な措置には今でも感謝しています。
後任の方が滞りなく仕事ができるように、業務内容のファイルを作成しました。
数ヶ月かけて引継ぎ書類を整え、配属が発表された日に鍵を後任にお渡しして、事務所を後にしました。
とどまっていれば安泰だったかもしれません。
しかし、問いが湧き上がってきた以上、中途半端なところで終わらせたくないという気持ちと、それに、現場でないところで仕事を続けるのは自分の性に合わないのだと改めて気づきました。
40代後半を迎えての人生の再スタート!
心理学は多少かじったとは言え素人、統計はまったく無知な文系人間、人生半ばを迎えたオジサンの無謀な挑戦でした。
心理士の情報はネットで調べれば手にすることができます。しかし、入ってみなければわからなかったこともたくさんあります。
そのような肌身の話も綴って行きます。臨床心理を目指している若い方々にも参考になればと願っています。
少しずつ具体的なお話しを書いて行きます。
本記事は、臨床心理士に挑戦したオジサンの1ケーススタディに過ぎず、あくまで参考としてお読みください。
しかし、人生後半を迎え、これからのことを真剣に考えておられる方、臨床の世界に興味をお持ちの方がおられるでしょうか。
実際にやってみた精一杯の情報提供をさせていただいて、何かご参考にしていただけるものが1つでもあればと願っています。
以下、本文はAmazon・kindleから出版されています。
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