【読書感想】ここはとても速い川
ここはとても速い川 井戸川射子 講談社文庫
仕事の忙しさがひと段落しました。読んだ本が自分の中に残っていかないことがなんだかもったいないと感じて始めた読書記録だったのに全然記録できていなかった。やりたいと思ったことはすぐにやらないとタスクの用に感じられてしまって私は今20冊ぐらい分の記録をしなければならない本で部屋が山積みだ、はあ、仕事も忙しいのに……と家へ帰るたびによりぐったりしていた。今はその状況は脱したものの、このままではどんどん読んだことを忘れてしまうのでどんどん感想を書いて下書きにためていこうと思う。ここで別に感想を書かなくてもいいでしょう、仕事じゃないんだしと思えないのが私のいらぬ真面目さよ。
さて今回記録するのは『この世の喜びよ』で第168回芥川賞を受賞された井戸川射子の『ここはとても速い川』です。初めて読む作家さんです。
タイトルだけきくとどちらかというとライトノベルのような印象ももてる。でも芥川賞受賞作家なんだよなとあらすじやタイトルだけではあまりどんな感じの本かイメージがつきにくかったです。
読んでみたら、わかっちゃいたけどラノベのラの字も関係ないような芥川賞受賞作家の作品だ!という作品でした。あらすじには子どもの目線であることが取り上げられているようにも思うけれど、どちらかというと関西弁であることのほうが印象に残りました。よく考えたら関西弁を話す人が出てくる話は読んだことがあってもこんなにずっと関西弁の話は初めて読んだかもしれない。隼の目線でずっと話が続いていくのもあって『おらおらでひとりいぐも』を思い出す。
話の展開にはさして大きな出来事も強烈さもない、語りだって淡々としている。それでもおぼれそうになる時の描写や児童養護施設の実習期間が終わった実習生のことを「ただの振り分けられた人たち」って書かれているところを読んで、どこか引っかかれるような、その擦り傷からじわりとした少量の血が少しずつ滲んでくるような感じがした。
蔵書マネージャーという本を管理しているアプリに「水」「深さ」「流れ」というメモがあったのでタイトルにも入っている川から何か感じたのだろうけれど思い出せない。いつもそういう文学における川というものはこれこれこういう意味なんですよ、みたいなことを知らず知ろうともせず読むので芥川賞などの作品を読むとき少し難しかったなあとかよくわからなかったなあと思って終わる気がする。
表題作のほかに『膨張』というアドレスホッパーの話が収録されていました。