闇夜の提灯
「あの人も毎年参加してるって」
そう聞いて出掛けた、兵庫のあるイベント。
来るかどうか解らず、約束もしていない相手に会えるわけが。でも、もしかしたら。
そんな淡い期待で光とジャズに溢れたイベントに降り立った。
あの人は生一本な性格で平気で無茶な依頼を放り投げてくる。
でもそれ以上に素早く、きっちりした仕事ぶり。
ぶっきらぼうに見えて結構冗談を言う。
口は悪いが愛妻家で、家庭菜園の苺を毎年くれる。
細身で老眼鏡を掛け、手元には煙草と缶珈琲。
つまりは祖父に似ていて、ファンだった。
私が二年半休んでいる間に彼は身体を壊し、かなり惜しまれつつ退職したと聞いたのはこちらが復帰してからのこと。
もう一度話したくて探したけれど、勿論会えなかった。
だから一年後、偶然会えるなんて誰が予想出来ただろうか。
「久しぶりやな」
声を掛けてきた彼は少しふっくらしていて、元気そうで。
「まさか会えるなんてな」
笑いかける顔はあの頃のままだった。
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