「落下の解剖学」とアカデミー賞予想
第96回アカデミー賞授賞式(現地時間3月10日)も近づいて来たので、「落下の解剖学」の感想と毎年恒例の勝手に結果予想をメモしておきます。
主演が「ありがとう、トニ・エルドマン」のザンドラ・ヒュラー、雪山の山荘で転落死した男性をめぐるミステリーなんて面白いに決まっていると楽しみにしていました。爆音のスチールパンが鳴り響く冒頭から不穏な雰囲気が漂い、これはただのミステリーではないなという予感が。前半は殺人の容疑をかけられた人気作家サンドラを中心とした法廷劇が淡々と続き、どんでん返しや「謎はすべて解けた!」を期待すると肩透かしを喰らうかも。
裁判は白黒つけなければならないけれど、実際はグレーなことも多いはず。そもそも真実とは?人気作家の妻と作家志望の夫という立場が逆だったら?母国以外で暮らすことの難しさなど様々な要素が詰まった裁判や夫婦の口論シーンには息が詰まり、その場にいる陪審員のような気持ちに。あそこまで激しくなくとも子育てや家事の分担で揉めるというのはよくあるし、ちょっとしたすれ違いが修復できない傷になってしまう怖さを感じました。サンドラは良くも悪くも人間らしく、弁護士(スワン・アルロー演じるイケオジ)といちゃついたりするし、どちらにも肩入れしにくいキャラ設定も絶妙。
目撃者である息子ダニエルの視覚障がいをトリックとして使わず、後半は彼が裁判を通して両親の別の面を知り考え成長していく物語になっていたのがよかったです。裁判で無罪か有罪か決めるように、父と母どちらを選ぶのか決断しなければならない。そんな彼によりそう賢い犬のスヌープの存在が救いでした。(あのシーンがまさか演技だったとは!カンヌでパルムドッグ賞に輝いたのも納得)
というわけで長くなったので、アカデミー賞予想は簡単に。
「作品賞」:「オッペンハイマー」
「監督賞」:ジュスティーヌ・トリエ(落下の解剖学)
「主演男優賞」:キリアン・マーフィー(オッペンハイマー)
「主演女優賞」:エマ・ストーン(哀れなるものたち)
「助演男優賞」:ロバート・ダウニーJr.(オッペンハイマー)
「助演女優賞」:アメリカ・フェレイラ(バービー)
「オッペンハイマー」は発表前に観ておきたかったけれど仕方ない。とにかく結果が楽しみです。ちなみに見出し画像はひな祭りに食べたちらし寿司。3月に入っても寒い日が続きますが、皆様風邪などひかれませんように。