いってらっしゃい【2020年度卒業式典式辞】
ただいま卒業証書を授与した卒業生の皆さん、卒業おめでとう。
教職員一同、心より祝福いたします。
保護者の皆様におかれましては、ご卒業をお慶び申し上げますとともに、これまで私どもが賜りましたご理解とご協力に深く感謝申し上げます。ありがとうございました。
さて、校長の話というのは、一般的に長くてあまり記憶に残るものではないでしょう。しかし校長としてこの場に立ってみると、みなさんに伝えたいことがたくさんあって、やはり長くなりそうです。ですから最後だと思って、お付き合いください。
今年の卒業生のみなさんは、全員が他校からの転校生でした。それぞれが前の学校で高校生活に疑問や違和感を感じ、自分が輝ける環境を求めてLoohcsへの転校を決意してくれました。Loohcsでの時間は、みなさんにとってどのような意味を持ったでしょうか。あらゆることがふつうの学校とは違うLoohcsでは、自由度が高い反面、自分と向き合う時間も多く、ときにそれは苦しくもあったでしょう。しかし、みなさんが迷い、もがきながらも、成長する姿を私たちはこの2年間しっかりと見せてもらいました。その結果どうでしょう。今日も個性が光る発表をしてくれた3年生、発表しなかった人もみんなしっかりと自分の色をもっていますね。一回りもふたまわりも大きくなったみなさんを私たちは誇りに思います。
みなさんが入学される時、「これからは予想のつかない変化の激しい時代がやってくる」とお話しましたが、この1年で、まさに社会のあり方は大きく変わりました。学校生活にも影響は大きく、楽しみにしていた宿泊研修どころか、毎日学校へ通うということすらも難しくなりました。今回のことのように、人生には自分の力ではどうにもならない理不尽なことも起こります。そんな時、世の中や誰かのせいにするのではなく、自分にできることを精一杯やってください。逆境の中でこそ、人は強くなれます。逆境の中にこそ、チャンスはあります。大丈夫です。みなさんならできます。
それでも、絶望することもあるかもしれません。もし「もうダメだ」と思うことがあったら、その時は勇気をもって逃げてください。
私は高校生の時、ミュージカルに打ち込んでいました。役者も裏方も一緒になってひとつのものを創り上げることがたまらなく好きで、「生涯この世界に関わっていればしあわせだ」と確信していました。しかし高校を卒業したあと、私は大きな挫折を2回経験します。1つは、金銭的な理由で海外で舞台芸術を学ぶ道が閉ざされたことです。その後日本で舞台俳優の養成所に入りましたが、半年後には疲労骨折で挫折します。すごく頑張れば、復帰する道もありましたが、怪我とともに心がポキっと折れてしまいました。裏方として舞台に関わるという道も選ぶことができず、他にやりたいこともなく、自己嫌悪に苛まれる日々が続きました。それからなんとなく出来る仕事をやったり、住む場所を変えたりしていく中で、徐々に私の世界は広がっていきました。スポーツの楽しさを思い出したり、旅をしたり、色々な人と出会いました。これは、生活のすべてがミュージカルのためにある生活の中ではできなかったことです。舞台から逃げたことで、舞台以外の人生が始まりました。
いまみなさんに見えている世界は、広い広い世界のほんの一部です。だめだと思ったら逃げてもいいんです。なにかを失う、終わりにするということは、別のなにかを得る、始めるということです。いつか過去を振り返った時に、逃げたはずの世界からも得たものが沢山あったことに気づくでしょう。何がどう、未来に繋がり活きていくかは、将来振り返った時にしか分かりません。
挫折も、絶望も、虚無な日々も、あなたの肥やしとなり、必ず将来につながります。辛い思いをしたら、いつか同じように辛い思いをしている誰かの役に立つ日がきます。ですから、安心してあらゆることに全力で挑んでください。
最後になりますが、今日みなさんはLoohcs高等学院を卒業されるわけですが、Loohcsコミュニティには、残念ながら卒業という概念はありません。これからもLoohcsがハブとなり、いろいろな形でみなさんの学びにつながれば、こんなにうれしいことはありません。
ひとまず今日でお別れです。卒業おめでとう。いってらっしゃい。
令和3年3月20日
Loohcs高等学院
校長 岡佑夏