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自分でもビックリするような“うっかりミス”をしたときのことです。

A「あれ?珍しいね、こんなミスをするなんて」
お「すみません。注意が足りませんでした。」
A「なんかおかちんらしくないね」
お「・・・申し訳ありません」

こんなやりとりがありました。


頭の中に浮かんだのは、
「おかちん“らしい”ってなに?」
「いつもおかちん“らしく”なくちゃいけないの?」
「勝手におかちん“らしさ”を押し付けないでよ」
という思い。

どうやら想像以上に「らしさ」に縛られていたようです。


わたしの中では「あなたらしさ」と「わたしらしさ」をあえて別物と捉えています。

「あなたらしさ」は、他者が思い描くわたしのイメージです。
わたしの日頃の行動や、他者とのかかわりの中で生まれた印象・人柄・人物像であり、他者の中で生み出されたものです。

「わたしらしさ」は、自己イメージです。
日頃の言動に現れることもありますが、心の奥底で思い描くありたい自分・なりたい姿・自己概念をも含むため、すべてが表出されるわけではありません。場合によっては意図的に隠すこともあります。




これを『ジョハリの窓』で考えてみます。

ジョハリの窓は記事中で解説されていますが、自分/他者と知っている/知らないの4事象によって、開放・盲点・秘密・未知の4つの窓に分類するというアメリカの心理学者 ジョセフ氏とハリー氏によって発案された分類法です。以下に、4つの窓の解説を引用します。

・開放の窓(open self)
自分も他人もわかっている自己を表します。該当する項目が多い場合は、自分について理解し、また、その認識が周りと乖離していないことになるでしょう。一方で、あまり項目があがらない場合は、他者から「よくわからない人だ」と思われている可能性があるかもしれません。

・盲点の窓(blind self)
考え方の傾向や口癖など、自分は気がついていないものの、他人は知っている自己を表します。他人から挙げられる項目が多いと、自己分析が十分でない傾向にあります。周りの目に映る「自分は知らない自己」について、しっかりと受け入れることが大切です。

・秘密の窓(hidden self)
自分ではわかっていても、他人は知らない自己を表します。コンプレックスや過去の失敗、トラウマなど「こんな自分を知られてしまうのは恥ずかしい」と、隠している部分です。あてはまる項目が多い場合、それだけ自己開示ができていない傾向にあると言えます。

・未知の窓(unknown self)
自分も他者も気づいていない自己を表します。誰にもわからないため、そこには未知の可能性が秘められているという考え方もできますが、一般的には「未知の窓」を狭めていくことが、自己を知って他者に理解してもらうことへの第一歩だと言われています。

前述の「あなたらしい」は、開放あるいは盲点の窓に位置します。特に求められる「あなたらしさ」に違和感を覚えているのであれば、それはまだ自分が認知していない自己の可能性があるため、盲点の窓に対して指摘を受けていると考えられます。

一方で「わたしらしさ」は、開放あるいは秘密の窓に位置します。特に「何もわかっていないくせに」なんて思いが湧き起こるのは、秘密の窓にいる自己が反応している可能性が高いでしょう。


つまり、「あなたらしさ」とは「他者から見えているイメージであり、自分では認知・受容できていない部分を含む」ということです。
そして、「わたしらしさ」とは「自分が思い描いている自己イメージであり、他者には知られていない部分を含む」ということです。
この食い違い=ギャップが、冒頭の不満へとつながっていくわけですね。


いつも「あなたらしく」振舞うためには、無理をしてでも他者の期待にこたえ続けなければなりません。本当の「わたしらしさ」とは食い違うまま、周囲のために演じ続ける・・・それは苦しいでしょうね。

一方で「わたしらしく」ありたいと思っても、それは十分に自己開示できていなければ他者の知りえないこととなります。何かの拍子にこれまで誰にも知られたくなかった「わたしらしさ」を、周囲が初めて目の当たりにしたとき、どんな反応をするのでしょう。その反応が怖くて自分を開放できないという方も少なくありません。




では「あなたらしさ」の呪縛から逃れて、「わたしらしく」生きて行くためにはどうしたらよいのでしょう?

それは、未知の窓へアクセスすることです。

未知の窓とは、自分も他者も知らない自己のことです。
例えば、学生であれば社会人として働いた経験がありませんから、バリバリと働く自分には出会っていないわけです。当然周囲もその姿を見ることはありませんから知りません。
あるいは、最前線で頑張って働くあなたが、これから管理職として上に立って後進の育成にあたる姿は未知のあなたです。経験したことがない以上、誰もその姿は知り得ません。

「未知の可能性が秘められているという考え方もある」と先ほどの解説で紹介されていました。可能性とは無限に広がるものです。未知の窓がどんどんと大きくなってしまうと、自己開示とフィードバックをどんなに繰り返しても未知の窓が開かれないままになってしまう、という意味が込められていると考えています。

ですが、わたしはあえて「未知の窓とは可能性の窓である」と捉えます。
それは、自分がこれから経験する中で気づく新たな一面を含んでいると考えているからです。

そこにはきっと新しい「わたしらしさ」や「あなたらしさ」があるはずです。その未知の可能性に自ら飛び込んでいって、経験を糧として自己の成長に取り込んでいけば、それはすべて開放の窓となり、「わたしらしさ」=「あなたらしさ」へと近づいていくはずです。
それが、自他ともに認める「○○さんらしさ」なのではないでしょうか。




この一連の行為を気づきと呼びます。
自己理解・自己探求のきっかけとなる行為です。

信頼できる他者とのかかわりの中で、自分自身の新たな一面を知るという経験はありませんか?

幼少期から現在に至るまでをじっくりとふりかえってみてください。ご近所付き合い、地域活動、新たな取引先とのやり取り、転職や転校による新しい仲間との出会い・・・人生の様々な場面において人との出会いがあります。
少なからずその中には信頼できる方ができて、その出会いによって自分の新たな一面に気づくということがあったはずです。

自己開示をし、相手からのフィードバックを受けて、新たな自分の一面を受け入れていく・・・それこそが気づきのサイクルです。


もし、「あなたらしくない」と言われたら、それは気づきのチャンスです。
フィードバックを受け入れて、何をもって「あなたらしい」と見てくれているのかを確かめることが、自己理解・自己探求の第一歩になります。

『いつも「あなたらしく」なくちゃいけない』
のではなく、
『いつもの「あなたらしさ」が発揮できていない』
と捉えたら、その理由や原因を自分で探ってみたくなりませんか?

ねっ、大きなチャンスでしょ?


「あなたらしさ」と「わたしらしさ」。
ジョハリの窓から理解を深めてみました。
あなたはどう感じましたか?




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