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キャリアコンサルティングにおいて欠かせないのが『概念化能力』。
相談者の語りから問題の本質を把握し、解決するための見立てを行うために必要なスキルです。

概念化
読み方:がいねんか

まだ概念的に説明されていなかったり、それを言い表すちょうど良い表現がないような特定の現象やものごとなどについて、新しい概念や用語などを作り出して言い表すこと。概念化する能力のことは、「概念化能力」などとも呼ばれる。

実用日本語表現辞典

言葉の意味からは、「ちょうどよい表現で言い表すこと」と捉えられます。

例えば、「もやもやするんです」という悩み。
この「もやもや」を別な言い方をしたらどうなるのでしょう?

「考えるだけで不安になって落ち着かない」
「いつまでも、その時のできごとが頭から離れない」
「自分では認めたくないけど、その人のことが嫌いなのかも」
「指摘はわかるけど、あなたにだけは言われたくない」
「もし他の人にも迷惑が掛かったらどうしよう」

などなど、できごとを具体化していくと、「もやもや」という短いフレーズに込められた思いや考え、感情などが見えてきます。
それを、悩んでいる本人が腑に落ちる表現にする(言語化する)ことが、概念化と言えるでしょうか。


ところで、概念化の目的って? 何のために概念化するのでしょうか?

そこがわからないまま、キャリコンが一方的に見立てて概念化をすることには、あまり意味がないと思うんです。

わたしは、概念化の目的は「相談者自身が納得いくようにできごとを整理するため」だと考えています。自ら語り直すことで、できごとを客観視してそこに映る自分自身を感じてもらい、できごとに対してどのような思考や感情が沸き起こってきたのかを、改めてふりかえります。
また、本人が気づいていない視点からできごとを見てもらい、そこに現れる悩みの原因をキャリアカウンセラー・コンサルタントと共有できる表現を見つけ出す試みでもあります。

結果として、「同じできごとがあったときに、過去の経験を活かせるように備える」ことができます。経験知化する、般化する、メタ認知化する―――1回限りのできごとで片付けず、経験として活かせるものへと昇華させることが、概念化のさらなる目的であるとわたしは考えています。


ともすると、概念化すること自体が目的になってしまい、何でもかんでも「概念化しなければならない」と考えてしまいがち。何のために概念化するのか、という目的をきちんと理解したうえで身に着けたいスキルですね。


かくいうわたしは、概念化ができると言い切れるほど、たいそうなスキルは持ち合わせていないと感じています。それは上を見たらきりがないから。指導者やスーパーバイザーなどスペシャリストがたくさんいることを知ってしまったから、とてもではありませんが「できます!」とはおこがましくて言えません。(この「おこがましくて言えない」というわたしの気持ちも、概念化が必要な悩みの一つかもしれません)

そういいながらも、例えば学生に対してはキャリアカウンセリングを行うことに一定程度の自信は持っています。おそらく日頃の悩みを相談してくれるというのは、概念化できているからだと思います。
少なくとも話が堂々巡りになったり、いつまでも「もやもや」のままで解決の糸口すら気づけないといった展開にはならないかなと。
何かしら前進する相談はできると自負しています。


この能力は、なにもカウンセリングの世界だけの話ではありません。
業務における課題を明確にする、顧客の要望を的確にとらえて明言化する、社会情勢や政治的背景を鑑みたうえで経営戦略を練り直す、といった社会人にとって必要なスキルにも概念化能力は役立つはずです。

これを『コンセプチュアルスキル』といいます。

カッツモデルで有名になった言葉です。

入社後は「テクニカルスキル=技術力」、マネジメント層に近づくにつれて「コンセプチュアルスキル=概念化能力」、そしてすべてにおいて「ヒューマンスキル=人間力」が必要とされるという理論です。


上記のサイトをはじめ、多くの解説で取り上げられているのが、次の10要素です。

  1. ロジカルシンキング(論理的思考)

  2. ラテラルシンキング(水平思考)

  3. クリティカルシンキング(批判的思考)

  4. 多面的視野

  5. 受容性(多様性)

  6. 柔軟性

  7. 知的好奇心

  8. 探究心

  9. チャレンジ精神

  10. 俯瞰力


様々な学びや経験によって後から身につけられるものもあれば、もともと持ち合わせているもの(地頭の良さ)もあります。

それぞれの要素の特に不得意はあるにせよ、これらの要素を高めることで、コンセプチュアルスキル=概念化能力は修得できると考えられます。

難しく考えればきりはありませんが、例えば日ごろの課題に対して先ほどの10要素で捉えてみたときに、それぞれ何点くらい自分は取り組めているかを数値化するだけで、概念化能力の把握はできます。
1回限りではなく、通年でその変化を数値化するだけでも、自身の成長やその課題は明確になりますし、どの要素を伸ばせばよいかが明確になるはずです。できることなら自己評価だけでなく、他社からの評価も交えるとさらに成長することでしょう。


わたしの場合、キャリアカウンセリングにおいて特に意識しているのは、2.ラテラルシンキング(水平思考)です。

相談者が、ある出来事とその瞬間の感情を語ったときに、「なぜそう思ったのだろう?」「なぜこのことを語りたくなったのだろう?」「この出来事ととこの感情はどんなふうに結びついたのだろう?」と、その背景や心模様に思いを馳せます。また、「風が吹けば桶屋が儲かる」といった語られていない/見えないつながりがあるのではないかと考えます。

もちろん考えすぎてしまうと先入観を抱き、カウンセラー側の描いたストーリーに沿って話を聴こうとしてしまう危険もあります。だからこそ、可能性の一つとして「~かもしれない」という聴き方を心がけています。

ときには思いもよらない話が出てくることも。こういう場合は、自分の想像力がどれほど小さく凝り固まったものなのかを痛感します。と同時に、可能性の幅を広げる大きなチャンスをいただいたと、相談者に対して感謝の気持ちを感じることは多々ありますね。


さて、ここまで概念化について語ってみました。
自分でもなんとなく理解していたつもりでしたが、noteにまとめたことで、明確に整理整頓できたと実感しています。

「概念化について概念化できた」・・・そんな感じでしょうか(笑)

あなたはどう思いますか?




明日も佳き日でありますように

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