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気の置けない仲間との対話。

「自己概念の成長が明確に定義化されているのだろうか?」という問いが出たのですが・・・頭を抱えてしまいました。

というわけで、今日は「成長する」ということについて考えてみます。




そもそも「成長」とはどういうことなのでしょう。

せい‐ちょう【成長】

人や動植物が育って大きくなること。おとなになること。
「子供が—する」「ひなが—する」「経験が人を—させる」

物事の規模が大きくなること。拡大。
「事業が—する」「経済の高度—」

小学館:デジタル大辞泉

「大きくなること」という解釈が共通していますね。
肉体的に、精神的に、規模的に、大きくなることが成長と言えるようです。


わたしたちCDA・キャリアカウンセラーは、「経験が人を成長させる」という視点に立って相談者に内省を促す関わりをします。経験は単なるできごとだけでなく、感情や思考、捉え方や解釈の仕方を含むものとして考えています。

経験を糧に成長したと実感できる瞬間を一度は経験したことがあるのではないでしょうか。

「あのとき、苦労したおかげで今日がある」
「当時は苦しかったけど、それを乗り越えたから今がある」
「文句を言いつつがんばったおかげで、自分は成長できたと感じている」

こんな風に昔をふりかえってみると、思い起こされることも多いはずです。




「経験が人を成長させる」のであれば、いったい「何が」成長するのでしょうか?

おそらく精神的な面での成長を指していると考えられます。

この精神的な面を、キャリアカウンセリングの世界では「自己概念」と呼んでいます。自己概念とは、「自分や自分の周囲をどう捉えているかという、その人らしいものの見方や考え方」のことです。

つまり、経験によって「自己概念が成長する」と捉えるわけです。


「自己概念が成長する」のならば、何を持って成長というのでしょう。何をどうしたら成長したといえるのか、成長するために欠かせない要素は何か、といった捉え方をすると、ふと気づくことがあります。

それは「具体的な指標は何か」ということです。




「自己概念が成長した」と実感するには、何かしらの比較対象が必要です。

童謡「背くらべ」にそのヒントを見つけました。

はしらのきずはおととしの
五月五日のせいくらべ

こんな歌詞で始まる身体的成長を歌った童謡ですが、わたしは「はしらのきず」に着目しました。

おととしの自分の背丈を柱に残しておいたおかげで、今の自分がその当時に比べてどれくらい伸びたかがわかります。これが成長した度合いを示す指標になっているわけです。


だとすれば、自己概念の成長も同様ではないでしょうか。

自分のものの見方や考え方を昔と今とで比較して、何がどのようにどう変わったのかを実感することが成長を確かめる術になるはずです。

仮に何かしら変化が見られたとしたら、その要因となったできごとがあり、そこで自分がどのように判断して行動し、その結果をどう受け止めてどう解釈して自分の中に取り込んでいったかが、成長した証となります。

普段はなんとなくぼんやりと自分の思考のクセとして感じていますが、キャリアカウンセリングを通じて自己概念を言語化・明確化することで、しっかりとした「はしらのきず」を残すことができます。

これを時間をおいて何度も語ることで、前回と今回の比較ができ、それが成長の度合いとして見えてくるのではないでしょうか。


以前と比べて、まったく違った考え方ができるようなったという人もいるでしょう。
特に変化が大きいのは、環境の中で慣習的に備わったものの見方や考え方の可能性があります。これは借り物の自己概念やディスコースなどと呼ばれています。

それまで自分が信じてきた考え方(借り物の自己概念)が通じないできごとに直面し、悩んで苦しんで複雑な思いを抱きながら問題を乗り越えます。
すると自分の中に新たな考え方が生まれます。こういう考え方をしてもよいのかもしれないと感じると、また別の問題に対して新しいアプローチをします。
その結果、また悩むこともあれば成功することもあります。その試行錯誤を繰り返したのちに、自分の中で確固たる考え方がつくり上げられていきます。
これが、経験を糧に成長するということだと、わたしは考えます。




自分自身で認めなくない部分も受け入れざるを得ないという経験をすることもあるでしょう。悔しいけれど認めざるを得ない、辛いけれども受け入れなければならないといった苦汁を味わうこともまた、成長の糧となる貴重な経験です。

特に苦悩の経験は、その裏側に守りたい自分が潜んでいることが多いです。何を守ろうとしているのか、なぜ守りたいのか、どれくらい大切にしているかを、苦悩と相対することで明確にしていきます。

例えば、わたしの経験としてこのような事例を挙げてみます。

2年前に公認心理師試験に落ちたことが未だに悔やまれ、「はしらのきず」として残っています。
その悔しさを、「他の方法で再チャレンジすればよい」とか、「そもそも受けるタイミングではなかった」とか、「直前でいろいろなことがあり過ぎて十分に対策できなかった」といった言い訳でごまかそうとする弱い自分がいます。
そうやって強がるのは、「本当は自分には実力がない」という事実を受け入れられないから。もし「実力不足」と認めてしまうと、今の自分を支えてくれている努力がすべて水泡に帰すような感覚に陥るからです。「すべてが無駄だった」と空虚な気持ちになることが恐ろしくてたまりません。もっと言えば、「これまでの人生そのものが無意味だった」と感じるくらいの恐怖です。
だから、今でも落ちたという事実を目にするたびに、心がズキズキと痛みます。それくらいショックを引きずっているわけです。

一方で、この事実を受け入れたからこそ、次なる目標に向かって進めていることも確かです。資格を取って終わりにできなかったから、その代わりに面接授業を受けたり関連分野に広げて心理を広く深く学ぼうというエネルギーになっています。
「実力不足なら、その実力を補うための行動をするしかない」と覚悟できたからこそ、今の自分の活力なっているとも考えられます。
その結果、受験時よりもはるかに知識も増えましたし、様々な経験を積み重ねることができました。願うことなら、今の状態で受験したい・・・けれども受験資格は大学院卒で、長期に渡る実習を終えなければならないため、到底受験できないというもどかしさがあります。

この話をここで書くことができるのは、悔しさや恐怖を受け入れて「自己概念が成長した」と実感する今の自分がいるからです。

この当時の自分を「志が低い」と今は捉えています。
資格が欲しいという気持ちばかりが先立ち、なぜ・なんのために・どのようなことを成し遂げるために公認心理師の資格を必要とするのかが、今ほど明確ではなかったんですね。だから表面的な勉強で終わってしまい、確かな実力もないまま試験に挑んだのでしょう。

今は、知識も経験も不足している人間が国家資格を持っていたらどうなっていたのだろう・・・と、逆に怖いと感じています。そう思えるくらい、この2年間の学びは充実したものでした。気持ちを切り替えるには十分な経験だったと自覚しています。
そのうえで、改めて抱いた志があります。それは「対人支援に役立てるために心理職の資格が欲しい」というものです。心理的なサポートを確かな知識と経験を持って行うために、資格が欲しいと切望しています。

自分の中での度合いですが、受験前とそこから2年経った今の自分とでは、明確な違いを感じています。
このように「比較対象があるからこそ、成長を実感できる」と言えるわけです。




もちろん、変化しないものもあるという意見は存在します。例えばわたしたちは持ち合わせている、自分軸や信念といった揺るぎないものです。変わらないのだとすれば、それはブレない自分であり、ありたい自分を示しているかもしれません。

ただわたしは、基本的には「人は変わるもの」と考えます。

一度うれしい経験をした後、もう一度同じ経験をしても前回ほどうれしさが感じられないということはありませんか?
それは慣れてしまったからです。人は経験した瞬間に記憶に刻まれるため、最初と2度目では感じ方に変化が生じます。

わたしたちはこの一瞬一瞬を経験して生きています。一度過ぎ去った時間は戻ってくることはありません。つまり、常に同じ感じ方をすることはないはずです。強いて言うなら似たような感じ方でしょう。

そう考えれば、人は常に変化し続けているわけです。転じて、「人は変わるもの」と言えるのではないでしょうか。




今日は「成長すること」をテーマに考えてみました。

・成長には「はしらのきず」という指標が欠かせない
・経験を糧に人は成長する
・ものの見方や考え方が変化するのは、自己概念が成長したから
・人は変わるものである

現時点では、このような仮説にたどり着きました。

CDA・キャリアカウンセラーとして、経験した瞬間とその経験を語っているこの瞬間とでは、きっとものの見方や捉え方に変化があるだろうという意識を持って関わることは、キャリアカウンセリングにおいて重要な要素だと改めて感じています。

「この方にとっての『はしらのきず』はどこにあるのか?」

こんな視点を持ってカウンセリングに臨んでみたいですね。




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