風よ、万里を翔けよ 田中芳樹
田中芳樹さんの「風よ、万里を翔けよ」を読んだ。
主人公はディズニー作品でもお馴染みの花木蘭(ムーラン)である。
花木蘭は唐の「木蘭詩」の元になった人物。
老いた父に代わり、男装して戦地に赴く女性兵の話だ。
田中芳樹さんは隋末期の煬帝から、唐の太宗である李世民が天下を取るまでの戦国時代を花木蘭の目を通して語りかけてくる。
中国の歴史といえば、「三国志」、または「項羽と劉邦」、「水滸伝」が日本では人気がある。私も「隋唐演義」については知識がなかった。
隋煬帝がいかに暴君か、そして李世民がいかに天才か。義士とはなにか。天下とは。人民とは。
田中芳樹さんは銀英伝の中で「民主主義の意義は民が選んだということに尽きる」と語っているが、実際、衆愚政治になって滅んだのちに「お前らが選んだ結果だ」といえるのであろうか。
私は共産主義でも先制主義でもない。
ただ、民主主義もぜんぜん完璧じゃない。天が人を殺すのは悪く、人が人を殺すのは良いという道理はない。
中国史上最悪の暴君とそのあとすぐに出てくる、中国最大の賢者である太宗・李世民。
この強烈な対比は、専制君主と共産主義のメリットとデメリットを強烈に教えてくれる。民主主義じゃない=悪、という数式は成立しない。
本当に最悪の民主主義は最良の先制主義に勝るのか、そもそも2択しかないのか。人間の本能によって永続な平和はそもそも人間には無理なのではないか。
風よ、万里を翔けよ は銀英伝のように民主主義思想について語ってはいないが、完璧な皇帝の存在が民主主義に対して果てしなく問いかけてくる。完璧な政策をする皇帝は衆愚政治による民主主義に劣るのか、と。
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