あじかん ごぼう製チョコレート風お菓子、ごぼうの新たな可能性を発見
主要産地の天候不順を原因とする、世界的なカカオの高騰で、苦境に立たされる製菓業界。既製品の規格変更や新たなカカオの産地の開発がされる中、業務用の寿司食材やごぼう茶を製造するあじかん(広島市、足利直純社長)は「ごぼうプロジェクト」第1弾として、カカオの代わりにごぼうで作られたチョコレート風素材『MelBurd』を使用した『GOVOCE』を、8月1日より同社公式サイトで販売を開始した。ごぼうとチョコレート、意外すぎる発想はどこから来たのか。それは研究員の、ある勘違いがきっかけだった。
思い付きで焙煎ごぼうを
1962年の創業から、卵製品やすし食材、きんぴらごぼうをはじめとする野菜加工品などの、業務用食品の製造販売を主にしていた同社は、2010年、ごぼうに関連した製品の取り扱いを始め、同社が製造する『機能性国産焙煎ごぼう茶』や『おいしいごぼう茶』をはじめとしたごぼう茶は、ごぼう茶市場でシェアの6割を占める12年連続1位の大ヒット製品になった。
そんな同社が開発したごぼう製のチョコレート風素材『MelBurd』は、プラントベース食品開発の中で生まれた。ココアバターを乳製品だと勘違いした研究員が、乳を使わないものを作ろうと、ココナッツオイルとココアパウダーを混ぜ、チョコレート風のお菓子を作った。失敗だと考え廃棄する時、思い付きでココアパウダーの代わりに粉末状の焙煎ごぼうを混ぜ合わせたところ、チョコレートのような風味になった。その後、食品物理学を専門とする、広島大学生物生産学部の上野聡教授の協力のもと試作を重ね、完成したのが『MelBurd』だ。名前は英語のMelting(とろける)、Mellow(芳醇)に、Burdock(ごぼう)を組み合わせた。
世界的なカカオ不足が起きている現在、カカオ不使用の代替チョコレートへの注目度は高い。そうした用途について尋ねた。
「代替チョコレートとしての問い合わせは多いのですが、現在の『MelBurd』は価格的には1kgあたり4000円と非常に高く、価格を抑えたいという需要に応えることはまだできません」と答えたのは同社市場開発部の岩本太一部長。「風味や香りに関しても、カカオと完全に代替できるわけでもありません。なのでむしろ、ごぼう由来の希少性の高い素材として求める方と、現在商談を進めさせていただいております」と続けた。
『GOVOCE』グランプリ受賞
同社が『MelBurd』を使用して開発した一般向けのチョコレート風お菓子『GOVOCE』は、完全にチョコレートに似せるのではなく、原材料である焙煎ごぼう本来の味や香りを楽しめるよう、あえて濃厚でコク深いごぼうの風味と芳醇な香りを残したという。名前はGOBOU(ごぼう)にイタリア語のVoce(声)とDolce(デザート)を組み合わせた。
また『GOVOCE』はカカオ不使用のためノンカフェインで、妊婦や幼児などでも気兼ねなく食べられること。1枚でレタス50g分の豊富な食物繊維が含まれることや、分析でチョコレートの主要な香り10種類のうち、焙煎ごぼうは8種類も共通する成分を持っており、香料不使用なこと。焙煎ごぼうの色はチョコレートの色に近いため、着色料も使用せずともチョコレートの雰囲気を再現できていることなど、健康的な特長も数多くあり、同社のノウハウを使えば、機能性食品として配合し、販売することもできたが、『GOVOCE』はあえてそれをしなかったという。
同社は長期ビジョン「あじかんv30 ver2.0」の中で、主要産業である卵焼きや巻き寿司素材と並んでごぼうを掲げており、年々消費量が減っていくごぼうの消費量を増やそうと「ごぼうプロジェクト」を立ち上げた。その第1弾となる『GOVOCE』を、いきなり健康機能性を押し出したものにすると、そうしたイメージが先行してしまい、ターゲット層を狭めてしまうことに繋がりかねず、広くごぼうの魅力を伝えることができないと考え、機能性食品にしなかった。
そうして開発された『GOVOCE』は、昨年11月のクラウドファンディングサイト「Makuake」での予約販売では約500人の購入者を集め、今年7月、(一社)日本フードアナリスト協会(東京都千代田区、横井裕之理事長)が開催する「ジャパン・フード・セレクション」ではグランプリに輝いた。審査レポートでは同製品の背景や意外性について高く評価しつつ〝一口食べると焙煎ごぼうの香りが口いっぱいに広がります。それと同時にチョコレートのような滑らかな口どけとほのかな甘みを感じ、素材本来の味がダイレクトに伝わる強さと自信が伝わってきます。カカオ不使用にも関わらずチョコレートのような舌ざわりと後味という今までにない新感覚を体験できるニュース性のある商品です〟と、その味わいも評価した。
ごぼう茶の「飲む」ごぼうに次いで、「食べる」ごぼうの新たな可能性を見出したあじかんの『GOVOCE』は、同社通販サイトで一般販売されている。52g×6袋、3500円+冷蔵便送料900円(税込)。