ある映画館の閉館とさよなら興行(前編)
開館の40年前を覚えているから。
とある映画館が、2024年2月末で閉館した。
1983年6月にオープンしたそこは、その当時、近隣地域では、かなり話題だった(はず)。
まだ子供だった私には、「デパート」とも違うおしゃれな何かが出来たらしいという認識だったし、渋谷や池袋にある「アレ」がどうしてここに?!という驚きは、今もある。
オープンした当時は、その勢いでもっと町全体が活気づくと期待されただろう。
高層ではないが、吹き抜けもある構造もランドマークとして凝っていたが、後に続くものが無く、他地域からの集客強化が出来ないまま老朽化。
駅の反対側は、賑やかとは言い難くも、商店街っぽい通りも残っていて、昔ながらのお店と小じゃれた飲食店などもあり、そのチグハグ感は嫌いではなかった、そんな町だ。
地域住民に愛されつつも、今回、閉店となった建物は、新所沢パルコ+レッツ。
閉館となった映画館は、そこにあった「新所沢 レッツシネパーク」だ。
土地勘のない人のために説明すると、まずまず大きいターミナル駅「所沢」から三つ目だ。
近年その所沢駅前の開発著しく、シネコンもできるようでその影響も大きい。
開館当時は小学生だったわたしだが、記憶にある最初の映画館で、シネコンの走り。
単館(一つの映画館で一つの作品を一日上映している)ばかりだった時代に、当時は「レッド」など、色の名前が付けられたスクリーンが小さいながらも三つあり、子供心にすごい!と思ったものだ。
家庭内でのレジャーに「映画館」がほぼ無い家で育ったわたしだが、初めての映画館体験が「南極物語」(1983年作品・南極大陸を舞台に、現地に残された樺太犬で、生き抜くことが出来たタロとジロに越冬隊員が一年後再会する話)だったのは覚えているし、場所はおそらく開館直後のシネパークだったと思われる。
母親+子供のご近所三世帯くらいで行ったはずで、大ヒットしていたが、子供向けとは言い難く、半分寝ていた気がする…。
時は流れ、高校生1年の時、友達と「ドラえもん」の映画を見に行った以降は、ややマニアックな映画が好みになり、都内の映画館に足が向くようになった。
そして、学生を終える頃にはレンタルビデオが身近になり、映画館に行くこと自体、激減していた。
さらに時は流れて2016年。
リニューアルの話題で、シネパークはわたしの閾値を超えてきた。
で、その時には、結婚して、娘がいたわけだ。
リニューアルと言っても、ちょぼちょぼ内装を変えた、などではなく「今後、これが映画館のデフォになったらすごいぞ」というレベルの座席のリニューアルだった。
スクリーンの前に大人三人までが寝転んで見られるボックスシートが設置され、その後ろは全席革張りの独立シートが2種類。
つまり3つの座席タイプから選ぶように。
以下、もうなくなってしまったHPからの写真↓
上記のボックスの真後ろの一列のみに配された、ファーストクラスのような電動リクライニングのフットレストまである椅子。
それより後ろは、(自重で)リクライニングの可能なひじ掛け付きの椅子。
そしてその個別シートの二種類はともに、通常料金という太っ腹っぷり!(というか、回収できるの?と思った…)
というわけで、幼い娘を連れた家族三人で、超がつくほど久方ぶりに訪れたシネパークは、リニューアル直後。
あれ、何階のどこにあるんだっけ?(構造的、位置的ににちょっと迷う)とか、こんなにロビーとか小さかったっけ? などと一人タイムスリップ感がすごいが、思いがけないほど懐かしさがこみあげてきた。
そして、上記のボックスシートで見た映画は、高校時代と同じ、永遠の定番「ドラえもん」。(ちなみに、私のドラえもん映画ベストは、「魔界大冒険1984年版」で揺るぎない)。
映画の日だったので通常より安くワンボックス3000円くらいであった。
スクリーンの直前なので、見上げるような感じはあるものの、足を伸ばしてクッションを背にくつろぎ感は半端ない。
乳幼児を連れたご家族にも最適な画期的な空間だった。
その後、ファーストも、セカンドも利用したが、とにかく快適!
前後も、隣も椅子同士の間隔がゆったりしているし、椅子自体も大きめなので、窮屈感なし。
また、腰痛持ちの私は、映画館や劇場では、何度か態勢を整えるのが常であったが、それが必要ないほど、椅子の座り心地も良かった。
スクリーンのサイズは小さめだが、通常料金で味わえる居心地の良さは文句のつけようが無く、見たい映画があるときは、まずシントコでやっていないか調べた。(やっていないことも多かったけど)
そんなわけで、何年か前に「新所沢パルコ閉店」のニュースが流れた際は、映画館リニューアルしたばっかりじゃなかったっけ?!と、意外に思った。
ただ、商いの意味から言えば、だろうなあと思う部分もあった。
だって、わたしが行くときは、映画館、いつもガラガラだったし(まあ、それも好きな理由だったが…)、パルコの店内も、同じような感じだった。
と、そんなことを思いつつ、閉館間近のシネパークのホームページを見てみると、ラスト一か月、さよなら興行と銘打って、人気作品のリバイバル上映をしているではないか!
どれどれと見ると、なかなかにバラエティーに富んだラインナップ!
新旧「トップガン」やら、「翔んで埼玉!」やら、「この世界の片隅で」、「となりのトトロ」、「スタンドバイミー」、「あん」などなど。
上記以外で、知らない映画もあった。
タイムテーブルの中から私が選んだのは2作品だ。
一つは知っているもの、一つは初めて知ったもの。
その二作品とは…。
中編に続く。
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映画の話↓
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