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42年生きてきて未だに心に強く残っている生き物の話をしてみる⑤

〜大分県佐賀関沖の無人島にはびこる悪魔、肉食ダンゴムシのオマル編〜


さて、そろそろ無人島に向かうとしよう。

装備の縛り

何度も言うが、無人島に行く目的は漢磨きである。ファッションキャンプに行くわけではない。

オサレで便利な「ギア」を持って行っては意味がないし、そもそも昔はそんなものあまりなかったし、あっても買う資金力は我々にはない。

なんだよ「ギア」って。

設定は船が難破したり、飛行機が墜落したりして運良く生き残り、無人島に漂着した設定である。

本当は着の身着のまま、持ち物無し、がベストだが、流石に召されるわけにはいかないし、半分強制参加させた連中から総スカンを食らうのも勘弁。

結果として無人島に1人が持ち込んで良い装備は、

・米(1人2合程度)
・水4リットル
・塩、醤油
・釣竿、銛、水中ゴーグル
・鍋
・紐、ライター、ナイフ、ビニールシート等自前で作ろうと思えば代替品を作れる文明度が低いツール
・エロ本

と定めた。

江戸時代以前に漂着したイメージなので、服装は甚平、足は地下足袋を制服とした。

無人島付近までの移動

高校生の頃は、小倉駅で集合して青春18切符的なのを使って、最寄り駅からはバスなどで移動していた。わけのわからない格好と装備なので、他の乗客から珍奇な目で見られた記憶がある。

大学生になってからは、ハイエースなどの8人から10人乗りの車を借りて移動をしていた。

そう言えば、当時軽油の価格って安いところで1リッター50円から80円の間だった気がする。ガソリン、軽油だけは確実に値上がりしてるな。あとタバコか。

瀬渡し船に乗る前の儀式

無人島付近まで行って、瀬渡しの船の調達に困った記憶はない。

漁港まで行けば、話しかけた最初の漁師のおっちゃんか、もしくはそのおっちゃんが誰かに連絡して船を出してくれる。

漁師のおっちゃんは気の良い人達だ。

船をゲットしたら、乗船前に必ずしなければならないことがある。

手荷物検査だ。

ユウキを筆頭に何名かの不埒な輩は、すぐに無人島に禁じ品を持ち込もうとする。主たるブツは、じゃがりこやコアラのマーチといった菓子類、レトルトの食材等である。

こんなものを持ち込まれては規律を維持できないので、全員のリュックは乗船前に必ずチェックする。

大体ここで禁じ品の発見、押収は出来るのだが、何度かユウキには密輸に成功されたことがある。

無人島到着後1日以上たち、一番キツいタイミングで陰でこっそりとじゃがりこを食っているのを発見した時には、無人島倫理委員会の開催を考えた記憶がある。

しかし奴はどうやってあの厳しい検査網を突破したのだろう。今度聞いてみるか。覚えてないか。

海をナメてる者に告ぐ

密輸入ポリスによる手荷物検査が終わるといよいよ船に乗り出航だ。

ここで1つ言っておきたい。

海はナメたらあかん。

ちょっと天気が悪い、風が強い、波が荒い、まあでもこのくらい平気か、と甘い考えをしてはいけない。

海は沖に少しでも白波が見えたらもう、それなりにやばいんじゃ。

そう、私も若い頃海をナメていた。

いざ出航

天気は晴れ、風は少しある、海はベタ凪って訳ではないが荒れている感じもしない。

よく見る普通サイズの漁船、まあ割と小ぶりな漁船は、操舵席の所にだけ雨風を凌ぐ面と屋根がついている

少し大きいサイズになると数人が船室に入れる仕様だったりもするが、大体は乗船している者は船尾で、屋根はないが、操舵席の面で風を凌げる所に乗る。そこに入り切らない場合は、船首のミヨシと呼ばれるらしいところに乗る。

小型、中型漁船はちゃんとした船室があるプレジャーボートやクルーザーとは異なる。

「今日は海が少しシケとるけん、ちゃんと座って掴まっとけよぉ」

操舵席でスピーカーで、漁師のおっちゃんはそう言うが、ディフェンシブな数人は船尾に乗るものの、他は船首ミヨシでわちゃわちゃしている

防波堤を越えて外海に出るにつれて、船は揺れ出す。

ちなみに私は船酔いをしたことがない。先祖が海賊説のDNAがそうさせるのか(岡野という苗字は瀬戸内の島に多い、江戸時代は奈良の郡山藩にいたらしい。ただ海賊説は親父の戯言の気もする)。

酒の白波のことホワイトウェーブって言うおっさんいるよね

外海に出ても、私を筆頭に調子乗りは船首舳先に立って坂本龍馬、勝海舟気分を楽しんだり、ふざけたりしている。

漁師のおいちゃんは特段何も言わず咥えタバコで舵を取る。

豊予海峡最狭部をしばらく進むと海に一筋黒く色が違った帯が見える。海流だ。

海流の影響もあるのか、その部分には白波が多く発生している。

海流に入る直前、漁師のおいちゃんがスピーカーで突然おらぶ(怒鳴る)。


「おぅら!掴まっとかんかい!おまえらあの白波が見えんのか!?」

その瞬間、海流、白波に突入した漁船は、立ち上がった馬のように船首が持ち上がり、舳先を空に向ける。

その次、船首は海に直滑降し、舳先は海の中に沈む。その瞬間、前と左右の海面は自分たちの目線よりも遥かに高い位置にある。

一瞬で身体を硬直させて船に掴まった船首ミヨシ組は流入した海水で流されそうになりながらびちゃびちゃになる。


「やけん言ったやろうが。なめとったらいかんぞ。」


漁師のおいちゃんは言い放つが、まじで船から落ちたらどうすんねん、ワシらやっぱりチャボか。

そんなこんなありつつ、漁船は無人島に着く。
いよいよ無人島生活の始まりである。

余談だが、波が高い時、船はその波に垂直に突入しなければならない。横から波をくらうと転覆のリスクがあるからである。これを船を立てる、という。

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