トランプ・パラノイア。- 「過剰流動性」の "エルドラド" 再び?
この人の ”再出馬” を最も歓迎しているのはウォール街かもしれない。2022年は相次ぐ金融引締めで業績は最悪。大量リストラの嵐が吹き荒れているのだから。この御仁、色々と問題は多いが、さすがに ”不動産王” を名乗っていただけあって、こと「お金」に関しては鋭い嗅覚を持ち合わせている。とにかくFRBへのプレッシャーが凄かった ↑ 。
だが "トランプ・パラノイア" (被害妄想)のパウエル議長は戦々恐々。お相手するのが相当大変だったのは想像に難くない。 ”共和党優勢” が伝えられた辺りから兆候はあったが、マーケットの雰囲気ががらりと変った。
まずは金利が低下した米国債。
とは言っても「トランプ大統領」再登板は最短でも2年後。FRBの「利上げ」自体に大きな変化はない。ただ3年超のゾーンには金利低下プレッシャーがかかっている。
そしてもう一点見逃せないのが「為替操作国指定」。” America First " のこの御仁が今の「ドル高」を許容するはずがない。移民や工場の海外移転で職を失った層が支持基盤な訳だから「ドル安」を推進するはず。こちらもマーケットが「ドル高」に飽きてきた絶妙のタイミングで再登場。前回の就任時もそうだったが、この辺りはタイミングを窺っていたのだろう。反転上昇していた米株価にも後押しとなった。
それでは業界が待ち焦がれる「過剰流動性」の "エルドラド" (桃源郷)の再現はあるのか?
筆者は極めて否定的だ。それどころか「トランプ大統領再登板」は「1970年台の悪夢」= * ”ボルカーショック” の引金になる蓋然性が高い。
2021年に「利上げ」が半年以上遅れたバイデン・パウエルコンビの致命的ミスの誹りは免れないが、そもそもFRBに「利下げ」プレッシャーをかけて必要以上の「株高」を煽り、中国に高関税をかけて現在の「高インフレ」の源を創り出したのはトランプ大統領自身だ。
「人口動態」によるベビーブーマー4,000万人引退のタイミングがたまたまずれただけで(この辺は悪運が強い)、極端な「人手不足」が「インフレ」の元凶になっている現状で「ドル安」を基本とする「トランポノミクス」再発動は最悪。 ”ボルカーショック” の再来は火を見るより明らか。
1985年「プラザ合意」から1987年「ブラックマンデー」に至る過程で既に 「アメリカ・ファースト」の限界。- 「年老いる世界」はどこへ向かうのか。|損切丸|note は露呈していたが、その後は金融を駆使した「マーケット資本主義」「株本位制」で凌いできた。
無理に無理を重ねた結果、LTCM破綻(1998年) → リーマンショック(2008年)に繋がるが、それでも「金融頼み」は修正されず、世界は「過剰流動性」中毒。ー 「テーパリング」(薬抜き)は並大抵ではない。|損切丸|note になってしまった。
今回のパンデミックを経て「インフレ」が勃発しているのはその帰結でしかなく、トランプ大統領がどうこうできる問題では無い。2京円以上もばらまいた「お金」が、それを吸収できるだけの「成長」「需要」が見込めなければ、価値が低下する=「インフレ」は必定でもある。
もっとも光熱費の上昇などで生活が困窮している生活民は藁にもすがる思い。アメリカもイタリアもドイツもイギリスも、そしてこの日本も不満は現政権に向かう。これは民主主義の最大の弱点でもあるが、間違いを繰り返しながら進んでいくしか無い。社会主義や専制国家よりはずっとマシだ。
ウォール街と投資銀行業界は今ワクワクしているはず。彼らは「ボーナス真理教」信者であり、国民が困窮しようが「スタグフレーション」が悪化しようが関心など無い。もっとも「1970年台の悪夢」が再現されれば最終的には "首切りの嵐" が待っており、我々同様、刹那的な浪費は戒めた方が身のため。それよりも「インフレ」対策としての「投資」が必要になる。
しかし、筆者も含め3年に渡る自粛生活で心が疲れており、案外刺激が強すぎる「トランプ大統領」に対する拒否感は強いのではないか。個人的にあと5年は「インフレ」が続くと想定しているので "御仁" の再登板は勘弁願いたい(苦笑)。2019年頃の「損切丸」を読み返していて、またあの ”ツイッター政治” に振り回されるのかと思うと溜息が出てくる。日本でホッと胸をなで下ろしているのは日銀総裁だけかもしれない(苦笑)。