開けてしまった「パンドラの箱」Ⅱ。- 今度は「中国のドル売り介入」とTIPS(物価連動債)か。
開けてしまった「パンドラの箱」。- 「ドル売り・円買い介入」が及ぼす「金利」への影響。|損切丸|note の続編として。
「あれっ、@7.1213?」
昨日(9/29) ”異変” が起きた。ドル・人民元相場である。これまで半ばフリーフォール(自由落下)状態だった人民元だが、それは中国当局の容認あってこそ。一時@7.2200台まで売られさすがに危機感を持ったのか、人民銀行(中国の中央銀行)が国営銀行に「ドル売りの準備」を促した。
これで「パンドラの箱」は日本(保有米国債1兆ドル)に続いて ”もう半分” が開くことになる。中国の外貨準備は日本の約3倍の3.5兆ドルだが、おそらく2.5兆ドルはAIIBや「一帯一路」でアフリカ、南米、東南アジア、オセアニア地域のドル建融資で溶けてしまっており、「ドル売り・人民元介入」に回せるのは実質米国債分の1兆ドル。それでも日銀の日本国債保有額が547兆円@8/31 ≓ 3.8兆ドルであることを考えれば、日中の2兆ドルは米国債相場を揺るがす程「異次元」の巨額だ。
だがその割に米国債市場の反応は日本の介入時に比べると限定的。アジア時間に@3.88%まで売り込まれた10年米国債は欧米時間に買い直され、結局@3.78%で戻ってきた。
これはどうしてなのか?
もう1つ、筆者が注目しているTIPS(物価連動債)で "異変" が起きた。
2017年以降、株式市場と共に「インフレ」相場を引っ張ってきたTIPS。2021年までは「過剰流動性」を反映して「実質マイナス金利」まで大きくラリーし、投資商品の中でも最高に類するパフォーマンスを誇ってきた。
だがそれも2021年後半に パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸|note で暗転する。昨日(9/29)は ”暴落” に近くかなりの "投げ" が出ている。こちらも相場の転換点 ≓ もう一つの「パンドラの箱」が開いたと言っていい。
5年BEI(予想物価率)は初めて@2.2%割れ < CPI@+8.3%、30年BEIは@2.0%を割り込む勢い。 "仕掛け" だけで起きる "異変" とは考えにくい。これが示唆するのは「実質金利が高すぎること」であり、結果として懸念されるのは米国の「リセッション」、それもかなり深刻なものだ。
大型ハリケーンの影響などで反発したWTIはやむを得ない面もあるが、 ”暴落” する株とコモディティ(商品市場)もTIPSに足並みを揃えている。
つまり今起きつつあるのは「インフレ」と「リセッション」の綱引き。それどころか最悪「スタグフレーション」まであるという警告だろう。目先大きな変化が起きそうなのは「ドル高」相場。2つ目の「パンドラの箱」=米国のリセッションが開けば流れは反転。パリティに戻り始めたユーロドルにもその気配が漂ってきている。今後ドル円も要注意だ。
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話はやや大袈裟になるが、こういう状況下最近筆者が強く思うのは「年老いる世界」。つまり中銀による「国債買占め」や財政バラマキで「過剰流動性」を創らないとやっていけないほど世界経済の足腰が弱ってしまったこと。「少子高齢化」が代表例である。
2008年「リーマンショック」後の政策対応がその始まりだったが、その時は中国が ”救世主” として現れ、その後10年間世界をリードした。だがそれも ”賞味期限切れ” 。「戦争」に繋がる流れに陥っている。
「年老いる世界」は各国首脳の ”年齢” にも現れている ↓
「昭和」を引きずる日本もそうだが、やはりアメリカの「老化」が酷い。4,000万人もいる「ベビーブーマー」の影響と思われるが、これも「シルバーデモクラシー」なのだろう。
G7ではドイツも似たような状況で「安い天然ガス」への極度な傾斜が命取りになった。対照的にBREXITしたイギリスは北海油田を抱え比較的元気。それは今年のFT指数が相対的にパフォーマンスが良いことと無関係ではない。全体に言えるのは「古い体制維持」に固執する国の方が状況が思わしくない。人に例えれば典型的「老化現象」という事になる。
考えてみれば長期政権の ”独裁国家” も生き残りを賭けた戦いなのだろう。「脱・炭素」や「サプライチェーンの再構築」は彼らにとって死活問題。ここで毛沢東やスターリン、果てはピョートル大帝まで持ち出すのは「懐古主義」=「老化現象」そのもの。それだけ追い詰められている証拠でもあり、だからあんな "暴挙” に出ている。
まるで衰えゆく「老人」同士が面子のためだけに「戦争」を起こしているようで、Z世代など次世代にとっては迷惑千万。ましてや核などとんでもない。ただ77億人にも膨らんだ人類は地球にとっては "害虫" 以外の何物でも無く、「戦争」も「気候変動」も一種の自然作用なのかもしれない。
とはいいつつ個人個人は自分の生活もあるわけで、目の前のマーケットや相場とも付き合っていくしかない。大袈裟にいえば「お金」の件も含めて人類の英知が問われる局面。我々は今そういう時代に生きている。