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「首切り」はそんなに怖くない ー 「解雇規制緩和」の是非
(参照) 「外資系」就職・転職を目指す君へ。-「人件費」に対する考え方の違い。|損切丸 (note.com)
”ドイツとイギリスとの大きな違いは何かわかるか?”
元英銀の同僚から質問された事がある。ドイツについては1990年代前半にマルクの金利を担当したことがあって多少知識があったが、当時際立っていたのが「労働組合」の強さ。様々な歴史的背景は割愛するが、端的に言うと第一次世界大戦の「ハイパーインフレ」を経て労働者の権利が強く保護される法体系になった。皮肉にも過剰な労働者保護が雇用の硬直化を招いて産業の活力を奪い ”欧州の病人” と言われるようになってしまった
一方のイギリス。こちらも1960~70年代に経済成長が長期的に停滞して「イギリス病」とまで言われた大不況に見舞われたが、1979年サッチャー首相の登場で転機を迎える。いわゆる「ビッグバン」(1986)による証券取引所を中心とする金融改革を筆頭に大胆な規制緩和がなされ、雇用市場が流動化。不況を抜け出した後は金融を中心に大復活を遂げドイツとは対照的な動きとなった。この事を元同僚は ”大きな違い” と指摘していたのである
ドイツに行って来ました。|損切丸 (note.com) 等々、何度か訪れたドイツの印象は、高度成長期に「終身雇用制」を布いてきた日本と労働者文化が近い。少なくともロンドンのそれとは大分違う。ドイツほどとは言わないが日本の労働者(厳密には正社員)もかなり法律で守られている
これはドイツも潜ってきた道だが、雇用を守ろうとすればするほど労働環境は悪くなる。経営者の立場で考えると視点が変わるが、「首切り」出来ないから新規雇用に慎重になる。4月の新卒採用に固定化した結果中途採用が増えず、労働市場の流動性が高まらない。その代わりにパートなどの非正規雇用ばかりが拡大し長期間の「デフレ」の一因となった。「失われた30年」は日本が ”世界の病人” と化してしまった証左でもある
現在与党総裁戦で "K" 候補が「解雇規制緩和」をぶち上げてメディアやSNSで袋叩きに遭っているが、彼の主張はおそらくそういう事。伝え方の問題はあるにしろ「現状維持」指向の強い日本人にはありがちな反応だ
だが「首切り」は本当にそんなに怖いのか?
「首切り」というと言葉からして何だか怖ろしげなイメージが付きまとうが外資系では日常茶飯事。むしろ再出発には好機でもあるし、割増退職金が出たりもする。ドライな米英方式は日本では根付かないだろうが、それでもきちんと「お金」さえ出せばそれ程揉めなくて済むはず。まして「人手不足」の今、企業サイドもバンバン「首切り」は出来ない。「変革」には絶好のチャンスでもある
そもそも「給料が低過ぎる」と文句が多い割には転職に挑む向きは限定的。若年層を中心に考え方が大分変わってきているが、雇用市場の流動性を阻んでいるのが「解雇規制」そのものだ。人員整理が可能になれば中途採用も増えるし、能力の高い人材は労働条件・待遇が改善する機会も増える。ここで「人」に出し惜しみするような企業は淘汰されていく運命だろう
”守ろうとすればするほど守れなくなる”
これは労働市場のみならず、主語を「資産」「投資」「マーケット」などに置き換えても同じ。スキーに例えれば、勾配が急で怖いからと体重を後ろにかけ過ぎれば転倒するリスクが増す。怖さを克服してきちんと前に体重をかける勇気が結局自分を守ることになる。偉そうに説教を垂れるつもりもないが、長く生きているとよくこういう事態に直面する
筆者も不祥事に巻き込まれて3ヶ月の減俸を喰らったことがあるが、あんなにショックを受けるとは想像だにしなかった。増して「首」ともなれば人格を否定されたように日本人は感じてしまうだろう。だがここは ”人生万事塞翁が馬” 。アングロサクソン流に言えばピンチはチャンスでもあり、新たな転機と捉えた方が上手くいく
30年近くに渡る「デフレ」を経て「現状維持」指向が強まっているの理解できるが、今や時代は真逆の「インフレ」に転換。今後はじっとしているよりも自発的に「行動」を起こす必要性が高まってくる。そんな中実は "K" 候補の「解雇規制緩和」の主張は時宜を得ている。そもそも選挙民が「政治」に変化を求めるなら自ら変わる必要があろう
国民がああだこうだと「文句」を言ってくるのは実は官僚、政治家の思う壺。それだけ彼らに "頼る" 事になるのだから。逆に一番恐れているのが一般庶民が自発的に行動を起こす事。若年層を中心に「投資」のエリアではそういう "芽" が出つつあるので、相場においてリスクや「損切り」に臨む心構えをぜひ生かして欲しい。政策も雇用も当事者意識を持って我々自身が自発的に「行動」を起こせば何かが変わってくる
「人手不足」の今、「首切り」はそんなに怖いものではないですよ