急浮上する「倒産リスク」。- 「信用」スプレッド拡大は危険水域に。
金利@4%「新時代」の到来 vs 「異次元」の国・日本。|損切丸|noteでこういう表現を用いた。
標題添付のグラフ ↑ は国債やAAA格の優良社債といわゆる ”ジャンク債” との金利差だが、2022年初から急拡大している。原因はFRBによる「利上げ」+「QT」(量的引締)。特に後者の影響が大きい。
逆に言えばスプレッドが+200BP(2%)そこそこに縮小していた2020~2021年が "異常" 。「給付金」バラマキなどの「過剰流動性」で行き場を失った「お金」がジャンク債などの ”危ない” 高金利債にも流れ込んだ。@$36,000台のNYダウ、ビットコイン@6万ドル超えも同根。
2020年5月以降はFRB自身もジャンク債を買い込んでおり、その「信用緩和」の影響は絶大。「コロナ危機」によるデフォルト連鎖阻止のためとはいえ、その後の政策転換の "手遅れ" が致命傷=「インフレ」になった。
ただこの信用スプレッド+500BP越えは危険。2008年「リーマンショック」時の+800BP超の水準を目指す展開になりつつある。ここからは 「弱いところを攻めろ!」 ー 「資金繰り」が決め手の「信用格差」。|損切丸|note QT(量的引締)が引き起こす「お金」の大移動。ー 「危ない所」から「安全な所」へ。|損切丸|note を覚悟。「倒産リスク」が急浮上しており、「投資」判断上、業績や割安・割高等の判断に優先する。
「倒産リスク」=「信用リスク」は「金利リスク」や「価格変動リスク」とは別次元のもの。なぜならある日突然価値がゼロになるからだ。鍵は「資金繰り」だが、これがまた厄介な代物。なかなか外からは見えにくい。おまけに苦しくなった企業(あるいは国)は "大丈夫な振り" をするので、見抜くにはそれなりの ”検証” が必要になる。
開けてしまった「パンドラの箱」。- 「ドル売り・円買い介入」が及ぼす「金利」への影響。|損切丸|note に "Crazy Sterling" 再び。- 英ポンド急落が示唆する「金利差相場」の嘘。|損切丸|note が重なってマーケットは一挙に不安定化してきたが、マーケットの現状を整理してみよう。
まずは暴風雨の震源地「米国債」。
1~5年債はおろか10~30年債も@4%に向けて突進。おそらく財務省(日本)が長期債をまとまった額保有しているのだろう。マーケットは*「介入」時の米国債売りに完全に身構えている。
「利上げ」予報も急速に変化し、遂にターミナルレート(FRBの政策金利到達点)が@4.5%に。これは「損切丸」が想定していた「@4~4.5%」とも一致する。おそらく米国債市場関係者も同様の見立てが多かったはず。
注目に値するのはTIPS(物価連動債)↓ の動きだ。
「利上げ」「QT」が本格化する前、5年BEI( Braek Even Inflation rate、予想物価率)は@2.5~2.6%で推移していたが一気に@2.2~2.3%まで低下。@2.2%前半で推移していた30年BEIの水準に並んできた。これは米景気の減速、更には "リセッション" (景気後退)を織込み始めた証拠でもあり、「信用スプレッド」の拡大=「倒産リスク」の上昇と整合的でもある。
この動きと連動しているのが株価。
今のところアメリカは "膨らみ過ぎた価格の解消" の段階。個別企業に「資金繰り」問題は出てくるだろうが、国全体の問題にはなるまい。
この辺りは日本も同じだが、相違点は:
ドルが厳しくなるのは新興国も同じであり、マイナー通貨の売り圧力には要注意。場合によってはデフォルトが頻発する危険もある。そして最もドルが厳しいのは中国、その中でも不動産業界と銀行。まさに「灰色のサイ」。
ドルを巡っては「過剰流動性」の急速な逆回転が起きており、この点はパウエル議長も認識しているはず。心配なのは「コロナ危機」対応の「信用緩和」同様、「利上げ」「QT」も政策転換が "手遅れ" になること。
元・弁護士の議長には酷かもしれないが ” Foward Looking" (先見性)なマーケットの要請に応え切れていない。またも ” Behind the Curve" (政策が後手後手に回ること)に陥れば今度は長期不況だ。TIPSも信用スプレッドもそのことを示唆しおり、状況証拠は揃ってきた。
マーケットは真剣に "手遅れ" を危惧している。「中間選挙があるから」などとまた政治に阿ればまた同じ失敗の繰り返し。「インフレ」退治は大事だが政策転換は時宜を逃せば致命傷だ。今度こそ” Foward Looking" な対応が出来るのか、その手腕が再度試される。