マーケットは「円」を中心に回っている?
最近こういう動きに気付いた。BTCは円建てで900万円を下値抵抗線にして1,000万円を軸に動いているように見える(標題グラフは6ヶ月チャート)。WTI(NY原油先物)然りで、こちらは@12,000円絡み。どちらも年初来の円建て運用成績はダントツの1.2位
マーケットは「円」を中心に回っている?
確かに様々な兆候はある。まずはFX。FRBに金融政策の歩調を合わせているユーロ、ポンドのボラティリティーは低い。これではファンドも "Ms. Watanabe" も商売あがったりで、ほとんどのトレーダーは「円」を手掛けるしかない。今なら「キャリートレード」が "ドル箱" ( "円箱" ?)だ
株式市場。米株のバリュエーションが「割高」なのは広く認識されており、NYダウの名目株価はほとんど上がっていない。ここで彗星のように現れたのが「新NISA」である
年初から月2,000億円とも言われる「円」が「オルカン」「S&P」に流入しており、これが「円売り」となってドル円を押し上げている
HFT(高頻度取引)が相場を支配する世界では、こういう "実需の買い" が決定的役割を果たす。秒単位で何万回も売買をこなす "マシーン" は業界の "都合" で「買い」にバイアスがかかっており、100億円の買いを何倍にも増幅する。これを「AIプログラム」に落とし込めば自動的な「買い相場」の出来がり。今のような市場の動きを牽引する
「新NISA」のペースが落ちて、仮に月500億円まで落ち込んでも「AIマーケット」に年間+6,000億円の "実需の買い" は十分。特に「積立」大好きな日本人は一度始めたら継続する傾向があり、HFT+AIとの相性は抜群である
これが名目で+3%しか上がっていないNYダウを円建てで+13%の「投資」に変える。日経平均(+15%)と遜色ない。ナスダックなら+19%。独DAX(+16%)や英FT(+15%)も同様だ
筆者が1つ心配しているのは2000年代に大流行した「グロソブ」(Global Sovereign)の二の舞。世界中の国債に投資し毎月「配当」があるのが売りだったが日本人は本当に ”毎月” ”積立” が大好き。だがそれを "安定" と勘違いしている節がある
(参照) 日本人にとっての「最適投資」2024 - 優先するのは「円安」それとも「インフレ」?|損切丸 (note.com)
「グロソブ」も「オルカン」も流行初期は絶好調。 ”赤信号皆で渡れば怖くない” 日本人の典型だ。現在の「円安」もそう。ファンドやAIはそれに "提灯" を付けている可能性が高い。「グロソブ」の時と1つ状況が違うのは日本が本格的「人手不足」→「真性インフレ」に突入していること。株や不動産などの「投資価値」が「お金」を下回ることはしばらくなかろう
だから今の「円安」をドライブしているのは自分自身である事を日本人は認識しておく必要がある。仮にドル円が年初の@141円まで戻せば「オルカン」の運用成績はせいぜい+5%程度。その時は「日経平均」も売られる
裏を返せばファンドもトレーダーも「円」絡みでしか収益を出せない構造に陥っている。2022~2023年、ヘッジファンド(HF)は米国債や株、あるいは暗号資産、コモディティ(商品市場)に至るまで「ドル投資」でメタメタにやられた。未だに資金流出が続き、実は経営は楽ではない
今の「円安」一本足打法は危うい。どうしても「LTCM破綻」(1998年)を思い起こすが、あの時は1つの "スターファンド" が100兆円単位のレバレッジをかけてウォール街が ”コピーファンド” 等で膨らませていた。 止まらない「過剰流動性」ゲーム - バローメーターはビットコイン|損切丸 (note.com) の今、投資規模自体は更に大きくなっているはず
いくつものHFや個人に分散しているので3日間でドル円が▼25円暴落(1998年)、なんてことは想定し難いが、累積しているマグマのマグニチュードはとてつもなく大きい。その点は頭に叩き込んでおく必要がある
もっとも中央銀行など各国の金融当局は「リーマンショック」(2008)の経験等から銀行に対する資本規制を強め「レバレッジ」に対しても監視を強化。 ”クラッシュ” を未然に防ぐためのノウハウは蓄積されており以前よりマーケットは強固になっている部分もある
だが…これも "大いなる皮肉" で管理を強化すればするほど ”バブル” は大きくなる。今回FRBが「QT」(量的引締)を緩めた、e.g., 債券償還額 月▼600億ドル→▼250億ドル、ように最後は「過剰流動性」頼み。これが「インフレ」を喚起して… やっぱり「インフレ」しかない|損切丸 (note.com)
何だか医学の進歩で寿命が延びたのはいいが、それが「お金」不足など大きな社会問題を引き起こしている構図に似ている。「人類の発展」って何だろう…。「お金」についても色々と考えさせられる今日この頃である