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「円キャリートレード」の "終着駅" はビットコイン? - 1998年の実例からの ”仮説”

 ”ビットコイン(BTC)、ねぇ...”

 ロンドンに行って来ました - 「お金」はそんなに大事じゃない?|損切丸 の「マネーマーケットREUNION」で旧同僚と色々話したが、BTCに関してはこれだけ上がっているのにほぼ無関心。皆それなりの ”プロ” でリタイア後も株とか不動産とか結構な金額でリスクを取っている連中ばかりだが、鼻で笑っている風。まあ理屈っぽい「金利」畑の人ばかりなので「損切丸」同様 ”わからないものには投資しない” スタンスなのかもしれない

 筆者が1つ思い当たるのが「円キャリートレード」。今回は1998年に破綻したLTCM(ロングターム・キャピタル・マネージメント)の実務経験を元に1つの ”仮説” を検証しようと思う

 例えば標題に貼った「ドル建日経平均」戦略。日銀が「利上げ」に転じるまでかなり "ブーム" だった。「ヘッジファンド」(HF)の名の如く、日経平均ロング(買い)の通貨価値をFXで「円売り」ヘッジするわけだが、この時受け取った「ドル」が手元で余る。米国債が強烈な「逆イールド」だった事もあって、最初は@4~5%台のドル預金やTB(Trearury Bill、短期国債)で運用していたのだろうが、その程度の利回りでは彼らには不十分

 そうなるとその時 "ブーム" の資産を買うという選択肢を取る。それはエヌビディア等の「マグニフィセント7」だったり、時にはWTI(NY原油先物)などのコモディティ(商品市場)だったり、5回転、6回転といわゆるレバレッジを効かして@10~20%の「高利回り」を目指す

 2024年相場の中で年初来+117%と圧倒的1位がBTC。2022年末比では+454%と未曾有の「高利回り」。これをHFが見逃すはずがない

 それにしても1枚@1,000万円なんて、とタカを括っていたらあっという間に@1,500万円(苦笑)それが昨日(11/26)は一気に▼5,000ドルも急落。らしいといえばらしいのだが、5~10%がいとも簡単に動いてしまうようでは筆者のようなオールドタイマーは正直手が出ない。しかもまともな理屈がどこにも見当たらない。未だにプライシングの根拠は謎だ

 個人の投資なら ”わからないものには投資しない” で済むが、競争の激しい投資銀行業界でそれは通らない。理解しているか否かに関わらず現場には強烈なプレッシャーがかかる。ただその "原資" が不足するHFとしては種銭=「ドル」が欲しい。そこで浮上するのが「円キャリートレード」

 この状況に酷似していたのがLTCMの投資手法

 現に「損切丸」からの2兆円を含め、大手投資銀行から20兆円余り"原資" を仕入れていたLTCMはそれを「ドル円」の買いでドルに換え、米国債や米株に投資していた。こういう取引を5回転、6回転とレバレッジして「円キャリートレード」は100兆円を超えていたと筆者は推計

 だがここまで増えると色々な資産が割高になってしまい買う物がなくなる

 こうなるとお決まりは低格付の社債だったり「信用」の低い「クレジット資産」≓危ない代物に流れる。1998年の "終着駅" は「ロシア国債」突然のデフォルトで幕を閉じることになった、e.g., 3日間でドル円が▼25円急落

  "危ない" "得体の知れない" という意味ではBTCも「ロシア国債」もいい勝負だろう。ただ相場が上がる以上ついていくしかないのが投資銀行の常。しかも現在は「AI相場」全盛で、プログラムは「円キャリートレード」+BTC買いなど "ブーム" の取引に一気に傾斜する。その度合い・スピードは1998年の比ではない

 筆者がここ数年見てきた状況では「円キャリートレード」による投資ターゲットの主軸は米株→日本株→BTCと変化しており、直近では@4.5%を上回った米国債にも流れ始めた。歴史的標準偏差が▼2~3%の「イールドスプレッド」(S&P vs 10年米国債)がプラスに逆転 ≓ 株の配当が国債利回りを下回るという 2つの「異変」 - 10年米国債のタームプレミアムと「イールドスプレッド」がプラス圏へ|損切丸 が起きた事からも「ドル」が株から米国債に逆流するのは合理的選択でもある

 つまり「金利上昇」で株価には一定の ”蓋” がされている状況で残った有望資産はBTCという事になる。そうなると「円キャリートレード」+BTCに傾斜するHFが増えるのは容易に想像できる

 ただBTCが▼5,000ドル急落したと同時にドル円が@153円スレスレまで落ちたのは気になる7月に日銀の「利上げ」をきっかけに@160円→@140円と▼20円も急落したのは記憶に新しいが、その時の「組み合わせ対象」だった日経平均が@31,000円台まで落ちたのは ”そういう事”

 筆者の ”仮説” が正しければHFは今12月の「再利上げ」に脅えている「円キャリートレード」という "ターボエンジン” が無ければBTCもここまでの急騰は演じられまい筆者の周りにBTCを買ったという人が皆無なことからもその可能性は高い

 それにつけても思うのは「人間は学ばないな」という事。 ”欲” が人を狂わせるのはいつの世も同じ中世のチューリップも日本のバブルも根っこは一緒。そして 「お金」の "力学" - 「減税」でも「金融緩和」でも「お金」をばらまけば「通貨」は売られる|損切丸 不要な「お金」をバラマキ続けてきた政府・日銀の罪は重い。今回も「いつ」「何をきっかけで」を当てるのは困難だが、1998年にデフォルトした「ロシア国債」同様、BTCも無価値になるようなイベントが起るのだろうか。備えておいて損はない


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