場外乱闘

マーケットは「場外乱闘」の様相。ー FRBは「利下げ」を強要されるのか。

 アメリカの株式市場は、*「落ちてくるナイフ」を超えて「刃物を持って暴れる暴漢」の様相だ。「金利市場」「FRB」は何とかなだめようと思って「薬」「利下げ」「金利低下」を与えてみたが一向に収まらない。「もっと強い薬よこせ!」と強要される始末である。

 *連日1,000ドル単位で暴騰暴落を繰り返すNYダウを見ていると、不謹慎ながら筆者はプロレス会場の「場外乱闘」を思い起こしてしまう。高校生の頃よく見た日本プロレス(馬場さんの方)に出てきたブルーザーブロディがイメージにぴったりだ。鎖を振り回して暴れ回るものだから、観客も右往左往して大騒ぎ。まあプロレスは興業のプロなので客に怪我はさせないが。

 医者(=FRB)も早めに「強めの薬」(=▼-0.50%の緊急利下げ)を注射したのだがどうも効かない。さあ、この暴れる男、どうしたものだろうか?

 依然3月17,18日のFOMCに追加策が取られる、と考えている市場参加者も多いようだが、「損切丸」は依然懐疑的だ。米国債市場を見ると、10年債が1%を割り込むなど金利が急低下しており、そう見えるのかもしれない。

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$  FF- 2- 5- 10yr  06 Mar 2020(グラフ)

 しかし、よく考えてみて欲しい。「強めの薬」=▼0.50%の緊急利下げは効かなかった「処方箋」が間違っているからである。いまさらそれより「弱めの薬」=▼0.25%の利下げを投与しても効き目がないどころか、不満でもっと暴れてしまうかもしれない。やるなら最低限同じ強さの薬だろうが、あと2回しか打てないここで使ってしまうのは本当に正しいのか

 (利下げするせよ、見送りするにせよ)今月(2020年3月)FOMC後の株式市場、そして為替ならドル円市場の失望売りが怖い。特に筆者が気になっているのが、日本人の「2つの巨大な円売(ドル買)」ポジション:①外貨建て保険3.8兆円(2019.6.3稿)と②日本の金融機関の「ヘッジ無し米債」4兆円(2020.3.2稿)だ。

 双方ともおそらく持ち値は@109~110円前後だろう。ここまでの道のり、何度か円安に戻す局面があったので、思い切った処分はほとんどできていないのではないか。今は悶々としているが、これが@105円を切ったら結構プレッシャーがかかるだろう。おそらくメディアも騒ぎ出す。「赤信号をみんなで渡る」日本人は、動き出せば一気である。最悪@100円割れまであるかもしれない。

 これ以上の利下げが「預金課税強化」になるECBも苦しい立場だ。国債市場でも依然ドイツ・フランス買/イタリア・ギリシャ売のような展開が続いており、このままだと最悪「ユーロ分裂」のシナリオも浮上してこよう。

実質金利G8(after CDS)@06Mar20

 繰り返しになるが、「パンデミック危機」に「利下げ」は正しい処方箋ではない。無駄に札を切ってしまえば、本当に必要な時に手がなくなる。今回の危機がやっかいなのは有効な対策があまりないこと。地道に「本当に必要な薬」を作るしかない。時間稼ぎには「利下げ」より「財政出動」だろう。

 幸い場外乱闘の主戦場はアメリカであり、今年(2020年)は大統領選だ。あとはトランプ大統領がその名の如く切る札とタイミングを間違えないことを祈るのみである。日本やヨーロッパ当局にはあまり期待しない方が良い。

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