見出し画像

“このままでは日本人は滅びる” ー 「円安」とも関係する難しい問題

 ファーストリテイリング柳井社長が危機感を持って語ったことが大きな議論を呼んでいる。2020.6.に 「ユニクロ柳井氏、京大・本庶氏、山中氏の医療研究に100億円寄付を即決」に思うこと。|損切丸 (note.com) で:

 「コロナは100年に一度の危機。今から必ずスタグフレーション(景気悪化とインフレの同時進行)や、社会的・経済的問題が出てくる。そういうときに国には縛りがあってできないことがたくさんある。だが、個人や企業なら自由自在にできることがある」

 と ”預言” していたが、「お金」も含めて世の中の流れが見えている。礼賛するつもりはないが、マーケットに関わっている「損切丸」的には無視できない内容を含む。これは今の「円安」とも密接に絡んだ難しい問題

 印象的だったのはこの降り ↓

 「日本は日本人だけでこれからやっていけないでしょう。少数の若い人で大多数の老人をどうやって面倒見るんですか」

 先日も別のTV番組で介護事業者の倒産多発と深刻な「人手不足」について議論してたが、コメンテーターの一人が軽々しく「外国人労働者をもっと積極的に入れればいい」と主張。???「円安」かつこんな低賃金で来てくれる外国人なんていない。おまけに介護は重労働で日本語の習得はかなり大変

 筆者の働いた投資銀行もグローバル展開しており、それこそ安い所をつぶさに見つけて拠点を移していた。ITサポートもシンガポールからインド、そしてウクライナまでセンターを移しコストを削減。グローバル展開しているユニクロも同じはず。そうしないと競争に打ち勝てない

 コスト面で考えると「円安」の日本は狙い目。だからIT大手がデータセンター拠点を作ろうとする。だが問題は日本の人的リソースが圧倒的に足りていないこと。つまり外資系に流れた人材、特に若い人材は介護事業など低賃金の業種には就かなくなる

 「少子高齢化」の問題についてはもう10年以上も政府が声高に叫んでいるが一向に改善しない。それどころか、むしろ悪化している。原因は極めてシンプル。「お金」を若年層に使っていないからだ

 例えば国立大学の「学費値上げ」問題。ヨーロッパでは大学まで無償の国もあるのにこれでは「少子高齢化」を加速させるだけ。志の高い優秀な若者程海外へ出て行ってしまう。100兆円もある予算のほんの一部でも振向ければ解決するのに、そういう議論は一切出てこない

 ではこの国の「お金」はどこに使われているのか。そう、「社会保障」の名の下に予算の3分の1以上が「国民皆保険」≓「医療費」に注ぎ込まれている最大の受益者は「老人」で還暦の筆者もそろそろ含まれてくる

 これはいわゆる「シルバーデモクラシー」と関係してくるが、選挙における投票者が圧倒的に「老人」が多い以上やむを得ない部分もある。何しろ政治家は当選してなんぼの世界

 ただ「投資」で考えると「お金」の「意味合い」が変わってくる

 例えば「大学授業料」「後期高齢者医療費」を比較すると、前者が後に国にリターンをもたらす「投資」と考えられる反面、後者は使ったら使い切り。不要とまでは言わないが、その比重が1:10(仮)なのが問題であり、せめて4:6ぐらいまで戻すべきだろう。そうしないと国が滅ぶ

 ”ユニクロと100円ショップが価格破壊を起しデフレを助長した”

 こういう意見もネットで見られるが、これは "お門違い" 。仮にユニクロがやらなくても他のグローバル企業が手を出していたはず。振り返ればバブル崩壊後に不良債権処理に時間をかけ過ぎて国力が削がれ気が付けば高付加価値を生み出す素地が失われてしまった事が大きい。要は経済大国になったという "自信過剰" と”油断” が原因。その "自信" も粉々に打ち砕かれた

 「現状維持」に窮々としているうちに「未来に対する投資」を怠った結果が今の「円安」=国の衰退。柳井氏の指摘は、ここからまた10年以上かけて「少子高齢化」対策をしても間に合わない、という "警鐘" 。そして最も深刻なのは「危機感の欠如」ということだろう

 現在「老人」に傾きすぎているリソース ≓「お金」の配分を調整し「将来価値」を生み出す「投資」に回すべき、というのが筆者の意見。政治的にはかなり難しいし、あと10年「世代交代」を待つ必要があるかもしれない

 ただ*今回日銀が「利上げ」方向に舵を切った事は一筋の ”光” ではある。「財政健全化至上主義」の財務省にしては珍しく "寛容" だが、それ程「円安」≓ 国力の衰退に危機感が生まれているのだろう。このままでは取れる「税金」も取れなくなってしまう

 毎年2・8月に「普通預金」の利息が支払われるが、利率が@0.001%から100倍の@0.10%に上がった事で数十円が数百円になった物価上昇率に合わせれば更に10倍、20倍になるわけで「金利」の本来機能を多くの人が実感することになる。持っている「お金」に付加価値が付くわけだから、地味ながらこの効果は大きい

 柳井氏の意見に100%賛同するわけではないが、マーケット同様、国家財政あるいは企業経営にも 続・日本人にとっての「最適投資」2024 - 大事なのは「投資価値」|損切丸 (note.com) は必要。要はどうやって付加価値を上げて将来のリターンを増やすか。若者ばかり足蹴にしていると、冗談で無くこの国は "姥捨て山" になってしまう。与党も野党も総裁戦の真っ只中だが、そういう議論もきちんと聞いてみたいものである

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?