消えゆく「マイナス金利国債」Ⅲ ー 「3度目の正直」? 欧州国債がマイナス金利脱却へ 。
消えゆく「マイナス金利国債」Ⅱ ー マーケットを追認する「金利上昇」 。|損切丸|note シリーズ。今度こそ「3度目の正直」なるか。記憶する限り、この3年でスイスの10年国債0%を見るのは初めてで、ドイツも▼0.03%とあと一歩に迫った。
アメリカの背中を追い始めたヨーロッパ。 ー 「利上げ」は先行実施。|損切丸|note でも触れたが、バイトマン・ブンデスバンク総裁のECB理事辞任(昨年12月に5年以上任期を残して)と パウエル議長の "心変わり" 。|損切丸|note でECBも風向きが大きく変わった。
そもそもイタリアやフランス、スペイン等の「ラテン国家」と「ゲルマン国家」では、産業や金利、「インフレ」に対する姿勢が天と地ほど違う。第一次世界大戦後の「ハイパーインフレ」の教訓から、雇用や経済より「物価安定」最優先の "規律の国” ドイツと、*リラやフラン、ペセタなどの「通貨安」とそれに伴う「インフレ」に苦しんできた「高金利国家群」。前者が鬼の形相で「利上げ」→インフレ退治してきたのとは対照的に、後者は「通貨防衛」のためやむを得ず「利上げ」してきた。
ECB現総裁はラガルド元・フランス外相で、その前は現イタリア首相のドラギ氏。ドイツが「統一通貨」の野望達成のため、金融政策の権限を譲った恰好だ。望まざる「高金利」に苦しんできた彼らにしてみれば、今のユーロの「通貨安定」+「低金利」の組み合わせは信じられないくらい居心地が良いはず。ずっと「マイナス金利」政策維持を訴え続けてきた。
だが「物価の番人」ドイツにとって、「グリーンインフレ」も加わり天然ガス価格が急騰するなど今の「インフレ」は我慢の限界。激しい "内輪揉め" が起きていると想定されるが、FRBの「利上げ」で急激な「ユーロ高」を避けられる見通しがたったため、 "渋々" 「利上げ」に舵を切り始めた。「インフレ」が元でトルコやウクライナ、ロシア、カザフスタンなどの国情が不安定になっていることもECBの背中を押している。
「悪い円安」で「景気判断の上振れ基準」を加える日銀も「利上げ」シフト。これで日米欧の金融3極が揃い踏みとなる。3者とも「インフレ税」による国家債務削減を図っていることは明らかだが、副作用の「インフレ」が想定を超えて悪化すれば「国富」の多くが失われてしまう。「利上げ」に手加減を加えれば「インフレ」は収まらないし、かといって「利上げ」を急げば株価のクラッシュや新興国のデフォルトなど違う問題が勃発する。**この「尻拭い」は困難を極めるだろう。
「通貨」や「株」に対する影響も過去に例のないものになる。米株は2021年に+20%上昇するなど、「インフレ」=「法定通貨の減価」を織り込んで動いてきたが、今後は動きが変わってくる。単純な「押し目買い戦略」では上手くいかなくなるだろう。
仮に日米欧の金融当局が「インフレ税」を優先して「利上げ」に手加減を加えれば、インフレが急加速して長期金利が急騰、「お金」が「株」から金利資産へ動く可能性がある。果敢に「利上げ」を前倒ししても同じ「お金」の動きが想定されるが、起こるタイミングや振れ幅は大分違ってくる。どちらがベターでコストが安いのか、筆者にはわからない(何せ例がない)。
相対評価の「通貨」はもっと複雑。特に30年近く動かなかった「超低金利」の ”巨鯨” 日銀が「利上げ」に動いた時のFX、円相場へのインパクトは未知数だ。ほとんど「心停止」状態だったJGB(日本国債)が人工呼吸器を外した途端暴れ出すのか、それともぐったりするのか、誰にも読めない。経験のあるトレーダーも既にマーケットに残っておらず、 "阿鼻叫喚" の相場になるかも(苦笑)。おそらくFXは「円金利」の動きに振り回されるし、ドル建債を中心に投資されていた400兆円の「外債投資」の行方も気になる。
じつはTONAR(無担保コールO/N)も1/7に@▼0.008%と、じわり「マイナス金利が消えつつある」。「金利」が示す「お金」の余り具合。|損切丸|note だけに、どこで ”号砲” がなるか。案外 ”鯉の滝登り” のように「利下げ」に動いているトルコや中国で「反作用」が強く出るかもしれない。
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