米NYダウと日経平均の乖離 - 2つの大きな問題点。(日本側からの考察)
史上最高値を更新し続ける米NYダウ。それに対し上値を抑えられて冴えない日経平均の動き。最近この2つの非連動性がかなり明確になってきている。損切丸として、特に日本株に見られる2つの考察を提供しようと思う。
1.為替レート - 人質となるドル円。円高。
やや意外なタイミングで昨日円高が進んだ。相変わらずFRBの利下げがどうのという記事が多いようだが、それはこの動きの本質ではないだろう。事実日米とも金利市場は為替レートを振り回すほどの動きはしていない。6月3日に寄稿したが、筆者は日本の個人、特に60歳以上の為替市場に疎いと思われる個人による外貨建保険の契約が根っこにあると考えている。その額2018年だけで3.6兆円。無視するには大きすぎる「円売り」ポジションである。
ドル円市場は「ミセス・ワタナベ」以降FXも拡大し成熟しており、今や金融機関に勤めるプロでもなかなか大きな利益を上げるのが難しくなっている。そんな中、3兆円以上も為替に疎い、意図せざるリスクテーカーが現れたら、最初(2018年中)は一緒に乗っかって円売りを仕掛け、終わったところで逆を仕掛けるのが常道だろう。なので、もしこれらの外貨建保険の解約状況をモニターできれば、より正確にドル円の底値を探ることができると思う。ざっくり想像で言えば、2兆円ぐらいの解約が出たあたりが底値だろう。103円なのか、あるいは100円割れか...
2.日銀による日本株買い占め - 「金融政策」としてのETF購入
弊著「お金のマニュアル」(株式編③、国家政策とインフレ税①)で触れているが、日銀は「金融政策」の一環としてETFを購入し続けている。その額、何と30兆円余り(実はこれに年金機構(GPIF)が買っている75兆円の株式投資もある!)。投資銀行が裁定取引を取り組んだ時は10兆円の「買い占め」で日経平均が4,000円ほど上がっていたと推測されるが(「お金のマニュアル」株式編③ご参照、2000年3月時点、ゼロ金利解除前)、現状は中央銀行(+政府)が更に巨額の日本株を買い占めており、上乗せプレミアムはかなりの金額になっているだろう。
このところ海外勢が日本株を買い控えたり売りに回ったりしているのはそのためだろう。様々な定量分析をしても割高な銘柄が多いと聞く。その辺は海外の投資家はシビアで、要は日本株市場に魅力がなくなってしまった、ということ。よくハゲタカとか言われるヘッジファンドなどは、実は意外とまともで、それこそ理屈に合わない投資はまずしてこない。彼らに資金を預けている投資家からの要求も高く、その投資姿勢は正に真剣。変な事はできないのだ。やはり「官製相場」は罪が重い。
そんな状況なのに政府は「年金2,000万円問題」などを喧伝しておいて、金融機関も揃って「預金から投資へ」などと白々しい旗を振っているのはどうかと思う。日経平均もダウに連動しているうちはまだよかったが、事ここに至り、NYダウとのこのパフォーマンスの乖離は、買い占め効果が限界に来ている証左であろう。ここからの日本株投資は余程銘柄を選別していかないと利益を得るのは難しいかもしれない。
余談になるが、7月8日に「~韓国経済危機シナリオ?」を寄稿した手前、ドル/ウォンレート、kospi指数、サムスン株などを注視してきた。1997年のいわゆる「IMF危機」や2008年の「韓国通貨危機」のような事態を想定していたが、どうも様子が違う。例えばウォン安、kospi安の同時安は現状起きにくいのではないか。よくよく考えてみれば、今やサムソンは半導体で世界一のメーカーであり当時とは状況が変わってきている。ウォン安は彼らにとってメリットでしかなく、むしろ株には買い材料。円安でトヨタが買われるのと同じ理屈だ。そうするとウォン安はkospi指数の買い要因として働く。
一部感情的になってこの辺りのことを囃す向きがあったりするが、やはりマーケットは非常に冷静である。いわゆる徴用工訴訟で訴えられている三菱重工を応援したいから株を買います、的なコメントも散見されるが、投資的にはやってはいけないことだろう。気持ちは分からないではないが、何度も書いている通り個人の感情と相場は直接関係はない。投資や相場とは非情、残酷な世界なのである。
とりあえず今朝の相場を見ると、さすがに昨日400円以上は下げ過ぎだったとの見方から日経も反発している。さて。昨日の貿易統計を見ると中国の景気減速は本物のようだし、日韓の話や選挙、為替の動向も気になる。ビットコインも115万円台まで急反発 - ポジション調整終了だとか...。ん~。
ただここ何年か、特にドル円や日経、金利市場など死んだような相場が続いていたので、動きが出てきたこと自体は歓迎すべき事なのかも。これもトランプ効果か? 動き方が不規則でなかなかタフだなあ、というのが正直な感想だが、面白くなってきたのは間違いない。今後も動きを追ってみよう。