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眠れる?「灰色のサイ」。 ー 予想外の中国「利下げ」が示唆すること。

 8/12 7月人民元建新規融資(中国人民銀行):
 6,790億元≓1.3兆円 予想 1.1兆元 前月 2.81兆元 前年同月 1.08兆元
 (内訳)住宅ローン等家計向け融資 前月 8,482億元 → 1,217億元
 法人向け 前月 2.21兆元 → 2,877億元

 ①感染拡大②雇用不安③不動産危機の悪化で企業・消費者が借入に慎重になったというが、統計を信用するなら凄まじい「信用収縮」だ。ここまで酷いと解説は不要。完全に「赤信号」

 8/15 中期貸出制度(MLF)1年物金利@2.85% → @2.75%、7日物リバースレポ金利も@2.1% → @2%にに予想に反して「利下げ」大幅「利上げ」が進むアメリカとは正反対の動き

 7,000兆円もの「借金」(アメリカとほぼ同額)の「資金繰り」のために金利も ”アメリカ並み” に据え置いて来たが、背に腹は代えられない。このまま「利下げ」を拒めば「不良債権」の火の手が金融システムに回り "焼け野原" になってしまう。日本の「バブル崩壊」をなぞったような展開だが、金額も桁違いだし、政治・社会体制も全然違う。

 問題は「借金」を国内の「お金」で賄えないこと株の時価総額や預金を含めた「換金可能資産」は「借金」の半分程(57.6%)しかなく、アメリカ(90.9%)や日本(72.7%)に劣る。つまり国外からの「お金」に依存しており、*売上高は大きいが「資金繰り」不安が付きまとう大会社のよう。

 *GDP世界2位と言っても差し詰め ”巨大なトルコ” 、日本ならかつての西武やダイエーのようでもある。2大グループがどうなったかは皆さんご存知の通り。大量に不動産を抱えている点も似通っている

 本来巨額な「お金」をかけて大規模なイベント、e.g. 軍事演習、などやっている余裕はないはずだが、こうなると「資金繰り」の惨状を隠すための ”ハッタリ” も必要。古今東西 ”独裁者” がやることは同じである。

 「マーケットなど共産主義には関係ない」

 こういわんばかりの国家運営だが「お金」は嘘をつかない香港ハンセン指数上海・深圳CSI300のチャート ↓ を見ても 逃げ出す「お金」。向かう先は...。|損切丸|note は明白。

 「不動産バブル」防止と「資金繰り」のために「金利」を高めに維持してきたが、こうなると「国外のお金」などと悠長な事は言っていられない「デフォルト」回避のため「人民元」の発行権を使って、自国通貨を増刷する≓「利下げ」に動くしかないということだ。

 対ドルの人民元は年初の@6.3100台から@6.7600台まで大幅な「人民元安」 ↓ が進んでいる。本来「利下げ」には「自国通貨安」に誘導して輸出増を図る狙いもあるが、日米欧を中心として「サプライチェーンの再構築」≓「中国外し」を進めている現状ではいくら安くても中国からの輸入増には繋がり難い。まさに「経済安全保障」。逆に「資金流出」のマイナス面ばかりが目立ってしまう。 

 為替レートという意味では、対ドルより対ルーブル、インド・ルピー方が大事かもしれない。だがこれらの国々は元々国家による「管理相場」の色が濃く、日米欧のようにマーケット機能を駆使しているわけではない。それぞれ「大量に余っている」労働力や原油・ガス等を押しつけ合うことにもなりかねず、必ずしも「通貨安」が有利という訳でもない「ドル経済圏に対するチャレンジ」と言えば勇ましいが、それ程簡単ではあるまい。

 もう1つ、「通貨」としての問題は**貿易やマーケットで "選別フィルター" を経ていない「自国通貨」の無軌道な増発は、底なしの「通貨価値下落」=「ハイパーインフレ」を招きかねないこと。これは「資金繰り」に詰まって "輪転機" を回して凌ごうとしたベネズエラ、レバノン、トルコ、パキスタン等の経済弱小国で起きた「デフォルト」的事象と同じ。

 **中国ほどの経済大国なら時間的余裕はあるかもしれないが、問題は今が山登りの6合目なのか9合目なのか「ハイパーインフレ」第一次世界大戦後のドイツ、2次大戦後の日本でも起きている中国だけ例外とは言い切れまい「台湾危機」が同様の結果を招けば「人民元」はかつての「軍票」のように紙切れと化す。売りだ、買いだ、といっても「信用」で成り立つ「通貨」とは所詮そういうもの。その点ははき違えないようにしたい。

 いずれにしろこの「灰色のサイ」は巨大過ぎるので、暴れ出した時のマグニチュードは半端ではなかろう。再度@30,000円に向かい始めた日経平均に逆風となる可能性もあり、隣国としても気が抜けない。上手に躱せればよし、むしろ***「利用」出来れば "最良のシナリオ" ではあるが…

 ***中国株の動きを見ると、2020年6月制定の「香港治安維持法」以降、欧米は2年かけて「お金」を中国から抜き取ってきた目先の利益にこだわる日本の経営者は決めきらずに遅れているように映る。今回の「台湾危機」が背中を押せばいいのだが…。まだ間に合う。

 8月NY連銀製造業景況指数 ▼31.3 予想+5 前月+11.1
 (内訳)新規受注 前月+6.2 → ▼29.6 出荷 前月+25.3 → ▼24.2

 昨日のNY連銀指数”誤報” かと見紛う程の下落。元々振れの大きい指標ではあるが、低下幅が「コロナ暴落」直後の2020年4月以来というからただ事ではあるまい。特に受注と出荷の落ち込みが激しく、半導体の過剰在庫が指摘されている。これを受けて米国債は買われた(金利は低下)。

 ここにも中国の ”クラック”(crack、裂け目)の影が見て取れる。株に関してはウォール街でも意見が真っ二つに割れており:

 ①FRBの「利上げ」が早期に終了し、株価は上昇
 ②世界的に景気減速が強まり、最終的に株価は下落

 いよいよ突入?「選挙相場」。ー 大統領になるためなら何でもアリ。相場には必ず "理由" がある。|損切丸|note を鑑みて、筆者も現状の相場を①:②=6.5:3.5ぐらいで見ているが、再終着地点については5:5

 戦略的には「大統領中間選挙まで米株買いで臨んで10月ぐらいで降りる」という感じになりそうだが果たしてそんなに上手くいくのか(苦笑)。米国債も含めトラップ(罠)ばかりの相場でスンナリとはいきそうもない。いずれにしろ向こう3ヶ月、マーケットは重要な局面を迎えそうだ。

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